丁乙(ディン・イ)
PEOPLEText: Hiromi Nomoto
あなたの作品で登場する“十字”は何に由来するのですか?
これはただ横線と縦線の交差、または符号です。私は以前デザインを学びました。玩具会社で3年間働き、そこでおもちゃのパッケージをデザインしました。当時はまだパソコンはなく、全て手描きでした。パッケージの寸法補助線(設計図でサイズを表記するために引く線)は十字です。そこから十字を得ました。
「十字 2011-3」2011 アクリル、キャンバス
多くの人があなたの作品を“米字”と言いますが、これについてどう思われますか?実際に漢字の“米”を意識しているのでしょうか?
漢字の“米”とは何も関係ありません。20年以上もこのように仕事をしていたので、バリエーションをもっと豊かにしたいと思いました。十字に少し回転させた十字を重ねると漢字の米の様な形になりますが、まったく違います。一画二画で十字のような符合になり、更に三画四画を足して米字のような符合に、その符合を四角で囲んだならば、全部で8画になります。私にとっては描く難易度が高くなり、思考としては更に複雑で豊富になります。このシステム上で様々な可能性を探しているのです。
「十字 2005-6」2005 アクリル、既成の布地
あなたの作品には鮮やかな色が使われていますね。これらには意味があるのですか?
私の経歴や、生活している都市と関わっています。始めの頃の作品は墨に染められていました。1988年頃の上海は、ほこりっぽく灰色に染まっていました。これが私の作品の色に現れています。
1998年には作品に大きな色の変化がありました。上海に強烈な変化があり、私はこの変化に合った強烈な色彩を探しました。そして蛍光色を使うようになりました。当時私は蛍光色を全面に使っていました。「ああ、(この上海に)偉大な時代がやって来た」というのが当時の私の気持ちです。
しかしその後また色が変わりました。2008年この都市化はもはや喜ぶべきことではなく、一種の問題であると考えたからです。
既成の布でキャンバスを作ったことについてお聞きします。なぜタータンチェックの布を使ったのでしょうか?バーバリーの布を使っているそうですね。
十字の表現を始めてから10年が経ち、新しい方法を探し求めていました。私はずっと格子を描いていまいした。人から「布を描いている」と言われました。だから私は直接既成の布を、もともとの布とは違ったモノに変えてしまおうと考えました。
「十字 2006-5」2006 アクリル、既成の布地
バーバリーとは限りませんが、(既成の布地に絵を描き)始めた頃、1ヶ月間ほど布を探しました。その後バーバリーの布が合っているということになりました。なぜならバーバリーの布(の格子模様)は完璧な四角だったからです。それに色も薄いからです。薄ければその色を変えやすい、これが理由です。
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