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カールステン・ニコライ+マルコ・ペリハン「POLAR M」

HAPPENINGText: Fumi Hirota

山口情報芸術センター(YCAM)の会場を埋め尽くした装置の数々。正面奥には、薄いブルーに白い線やドットが漂う美しい構造体が2つ。整然と並んだ小さな岩。入り口近くには、3つの異なる装置が置かれている。

カールステン・ニコライ+マルコ・ペリハン「polarm」
インスタレーション内、構造体の様子

「アートからの環境観測」をテーマにした本作は、この空間全てが、いわば、ひとつの環境観測の装置として機能する。ビジュアルアートやサウンドアートで常に先鋭的な活動を続け、さらに、アルヴァ・ノトの名で、音楽家としても活躍するカールステン・ニコライ。そして、アクティビストとして、アートとテクノロジーに関わる世界各地のプロジェクトに携わり、テレコミュニケーションや気象観測システムなどにフォーカスした極地移動ラボプロジェクト「Makrolab」の活動などで知られる、マルコ・ペリハン。それぞれに活躍を見せる2人のアーティストによる10年ぶりのコラボレーション、待望の新作「polarm[ポーラーエム]」が、ついに発表された。

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インスタレーション内、構造体の様子

2000年にスタートしたカールステン・ニコライとマルコ・ペリハンによるプロジェクト「polar」は、それぞれの時代にあるメディアテクノロジーと、私たちが生きる世界との関係を、10年単位という長周期で探求し、アートによるランドスケープと、それらを観測する独自の方法論を提示するものといえる。2001年のアルス・エレクトロニカでゴールデンニカを受賞した、その先駆的なアイディアと、彼らのアートとテクノロジーへの独自の見地は、10年を経た本作で、新たな展開を遂げている。

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インスタレーション内、ガイガーカウンター(左)とロボットアーム(右)(いずれも、放射線計測装置)

「放射線 (radiation) 」の存在に着目した今回のプロジェクトでは、地球における放射線、電磁波の特性が、空間内の様々な装置によって観測され、光・音に変換、さらに、映像や音響で表現される。地球環境と情報環境、現実空間と情報空間との狭間にあるような、普段は気づきえない、もうひとつの「環境=<未知なる極地としての環境>」の姿が、現前化する。

待望の新作発表を記念し、オープニングには、シンポジウムとライブが開催された。アーティストにくわえ、「polar」プロジェクトのキュレーターである、阿部一直(YCAM)、四方幸子、さらに、ゲストとして、ベルリン在住の美術史家、キュレーターであり、V2(ロッテルダム)やTESLAを経て、「ISEA2010RHUR」のディレクター、そして現在、ドルトムントU(ドルトムント)の館長であるアンドレアス・ブレックマンが参加した。

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YCAM sound tectonics #8 オーディオビジュアルコンサート「raster-noton evening」出演: (左)cyclo.[カールステン・ニコライ+池田亮司]、(右上から)byetone[オラフ・ベンダー]、nibo ゲスト:クリストファー・ウィリッツ

いまや私たちの周囲に溢れている情報技術。技術的な進展とともに、多様化し続けるテクノロジーを前に、アートはどのような視座をもたらすのか。絶え間なく変化を重ねる環境に対し、積極的にアプローチをし続けるアーティスト、そして新たな意識や眼差しを開示する作品から、私たちは次の10年に何を感じるだろうか。

カールステン・ニコライ + マルコ・ペリハン
新作インスタレーション 「polarm [ポーラーエム]」 (YCAM委嘱作品)

会期:2010年11月13日(土)〜2011年2月6日(日)
時間:10:00〜19:00
休館日:火曜日 (祝日の場合は翌日) 、年末年始
会場:山口情報芸術センター [YCAM] スタジオA
住所:山口県山口市中園町7-7
TEL:083-901-2222
料金:入場無料
https://polar-m.ycam.jp

Text: Fumi Hirota
Photos: Ryuichi Maruo Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]

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