東信

PEOPLEText: Mariko Takei

植物が発する色彩や形などの視覚的な美しさだけでなく、そこから音も感じ取り作品として展開しているのは、ジャルダン・デ・フルールという花屋を営みながら、植物を使って作品を作るアーティスト、東信(あずま・まこと)。植物という命あるものを素材とした作品からは、力強さと繊細さ、ハードとソフト、そんな2つの相反するエッセンスを捉えることができる。これまでに、コレットでの展覧会を初め、カルチェ現代美術財団「Les Soirees Nomades」でのパフォーマンスや、ドイツNRWフォーラムでの個展など、国内外の数多くの場で作品を展示。今年3月に終了した自身のプライベートギャラリーAMPGでも2年に渡り精力的に作品を発表してきた東氏だ。今後も植物と共に肩を並べて着実に前進している東氏に電話インタビューにてお話を伺った。

東信

自己紹介をお願いします。

お花屋さんを経営しつつ、それをベースに植物を使ったアーティスト活動をやっています。

東信
「Distortion x Flowers」アイ・オブ・ジャイル, 東京, 2009

現在東さんが手掛けているプロジェクトについて教えてください。

5月15日から表参道「ジャイル」のアートスペース「アイ・オブ・ジャイル」にて「Distortion x Flowers」という個展を開催します。エフェクターから作りだされる色々な音の歪みからインスピレーションを受けた花を生けて、写真とともに展示するというものです。写真は相棒の椎木俊介が手掛けてます。

また、5月28日からエプサイト・ギャラリーで開催の森山大道さんとのコラボレーション展があり、そこでは、森山さんの写真に落書きをしています。イラストや落書きが結構最近面白いなと思って。もともとスケッチは、展覧会などの時に、お花の作品は残らないので、それを残していく手段としてスケッチは描いていて、それを展示してお客さんにも見てもらってます。

あと、直島(香川県)で進んでいるアートプロジェクトの一環で、大竹伸朗さんがデザインを手掛けている銭湯周りの植栽を担当しました。ガラス張りになってて温室が見えるのですが、パンクなサボテン園を作りました。かなりマニアックなものになっています。

東信
「ジャルダン・デ・フルール」東京, 2009

ジャルダン・デ・フルール」という花屋を営んでいらっしゃいますが、そもそも花屋を始めることになったきっかけは何だったのでしょう?

中学からバンドを組んでいて、音楽をやろうと思って上京しました。でも、音楽やろうと思ったら、アルバイトをしなくてはならなかったので、たまたま求人していたお花屋さんのチラシを見つけて、家も近いし、いいかなと思って始めたのが、この世界に入ったきっかけです。お花が好きとか興味があるとか、そういうのは全くなかったですね。僕はもともと田舎育ちなんですけど、自然は自然のままにという概念が強かったので、初めて「あぁ、こういう世界があるんだ」ということを知って、とても面白いなと衝撃を受けました。

そこから、アーティストとしてお花を使った作品をつくるという発想はどのように生まれていったのですか?

お花屋で日々花と接しているのですが、それは基本的にはお客さんの為に、花を使い作品を作ってそれを提供するという仕事です。それが段々と、花ともっと直接的な関係を結びたいなと思うようになり、花の持つ独自のものをもっと引き出したりとか、自分が発想する花の姿になってもらいたいという願望が生まれてきました。生け花という手段もあったんでしょうが、僕の中ではしっくりこなくて、その願望がずっと自分の中でモヤモヤしていて、だったら自分で始めちゃえってところから始めました。

最初に作った作品はどのようなものだったのですか?

松を吊るした作品です。もともとアーティスト活動を始める前に、魚のいりこを使ってクリスマスリースとかを作って、ちょっと尖ったお店に置いてもらったりしていました。周りの人も面白がってくれたり、もっとストイックにこういうのやったらいいんじゃないか、ということから、自分なりの表現を求めていく事になったのだと思います。

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