
解体と再建。
ゼンダイMoMA(上海証大現代美術館)では、今年初となる大規模な展示「スターティングポイント:侵入するアートと暮らし 366」が開催されている。この展示でフィーチャーされている作家の一人、ガブリエラ・マシエルは、圧倒的なインスタレーションを創り上げる、情熱的なブラジル人アーティスト/パフォーマーだ。

Goticulae Sublimaris, 2008 / Lycra, Cotton and foam / 150 x 120 x 60 cm
上海で展示されている作品を中心に、あなたの創作プロセスと、コンセプトについて教えてください。
ゼンダイMoMAに展示した「コーテックス・ウォール・オブ・ブライトネス」など、特定の場所のためのインスタレーションの際には、私はその作品のドローイングをすることから始めます。
インスピレーションを感じ、技術的な研究をするのです。すると素材と向き合った時、その場でひとつのドローイングから様々な方法が生まれてくるのです。
これは時間に基づく過程です。私が創作を行う場所で、行き交う人々に向けたパフォーマンスだと言ってもよいでしょう。私の内にあるコンセプトや創造性が、その場所で手に入る素材、建築物のテクスチャーや形、作品制作に与えられた時間、天気や会場の大きさ、人々の循環のしかたや空間との関係性といった、その国の文化的な影響を受けるのです。それらがすべて、私の創作に影響してくるのです。

Chimera Realis, 2008 / Lycra, Cotton and foam / 650 x 180 x 120 cm
そういった過去の例として、2003年から2007年までの間、私は観客の目の前で、パフォーマンス中に創作を行っていました。事前に私がレコーディングしたデジタル音楽に合わせて、その場で創作をするというもので、今よりもずっと激しい肉体的な動きを伴うものでした。また、デジタルビデオのプロジェクターを使って、別の日に行われた同じパフォーマンスの映像を上映し、照明のかわりにした事もあります。時間と過程をオーバーラップし、観客をも創作過程のなかに組み込んでしまうのです。
ひとつの作品の創作過程や表現に複数のメディアが深く融け合っているので、この制作方法を充分に理解するのは簡単なことではないでしょう。私は、非常に人力がかかる手仕事によって作られる、非常に現代的な素材を扱う事もありますし、最新の技術を用いてとても古い時代のものへと変化させることもあります。
古さと新しさは混ざり合い、時間と過程は膨張し、加速し、そして時折重なり合うのです。
好奇心、不思議さ、斬新さ、夢、そして奇妙さ。これが私の作品を表す言葉と言えるでしょう。

Bluepsibir, 2008 / Lycra, Cotton and foam / 70 x 70 x 70 cm
作品に用いる素材はどのように選ぶのですか?あなたはご自分の作品を「彫刻」と呼びますか?それとも「オブジェクト」と呼びますか?また、あなたの作品はとてもオーガニックな形をしていますが、色は人工的でもあります。この対比はどのように生まれるのでしょう?
私は矛盾したものに惹かれます。現代社会に生きる私たちのDNAはいま、無意識の衝動や、創造的思考、肉体、生まれたときから溢れている情報の中に宿り、止まる事なく「機械的人間」へと進化を続けています。そしてこの機械的人間は、人間のありのままの要素からだんだん遠く離れたものになっています。私はひとりのアーティストとして、人工的な世界でナチュラルに生きるとはどういうことか、あるいは自然な世界で人工的に生きるとはどういうことか、という問いについて考え続けています。
2003年から2007年の間に制作した作品のことは、私は「生きもの(creatures)」と呼んでいます。
現在の作品は「錯乱した怪物(Delirious Chimeras)」という風に呼んでいます。でももし「彫刻」か「オブジェクト」か決めなくてはいけないなら、「彫刻」と言えるでしょう。なぜなら「オブジェクト」というのは私にとって、ある決まった目的のために、誰もが店で買うことができるものだからです。
本当の事を言えば、これらは「オブジェクト」でも「彫刻」でもないのですが、こうした区別はひとつに合わさって、もしかすると将来新しい呼び名が出てくるかもしれませんね。
Purifying Process, 2004 / Performance at SOSO, Sapporo
どのようにして作品の形の着想を得るのですか?創作の過程で生まれてくるのでしょうか?また、音楽に関係があるのでしょうか?
以前「生きもの」を制作していた頃は、音楽にとても影響を受けていましたが、今は古代文化から現代に至るまで、植物や動物、肉体について、本を読んで研究しています。
自然のあるがままの姿が、私の創作活動に新たな始まりをもたらしました。だから私は作品に、ラテン語など様々な言語の起源をもつ科学的な名前をつけているのです。最近の作品の名前には、「ゴティキュレー・サブリマリス」「オーシャニス・フレックス」「コーテックス」などがあります。
現在の、「錯乱した怪物」の時期に入ってからは、デジタルビデオ作品も制作しました。あるアニメーション/サウンドアーティストとのコラボレーションでした。「錯乱した怪物」は、デジタルの分野でも意欲的なのです。
これまでの私の作品は、すべて「肉体」と比較することができます。肉体は様々なパーツから成り、それらのパーツは各々に独自の機能を持つのです。
私の作品という「肉体」は、ドローイングや絵画、彫刻、インスタレーション、ビデオ作品、写真や音楽、メディアミックス作品、マルチメディア作品というパーツで構成されます。そして言葉がいくつかのパーツを組み合わせ、他のパーツはひとつのメディアの手足となっているのです。
「コーテックス・ウォール・オブ・ブライトネス」を例にとると、私は透明なプラスチックを、泡やプラスチック製品、グラフィティなどいろんな素材と共に組み合わせ、素材に新たな美しさを与えました。一体何で作られているのか説明するのが難しいほどです。
作品の深みは、技術やコンセプト、美学の混ざり合いのなかにも存在しているのです。
スターティングポイント:侵入するアートと暮らし 366
会期:2009年1月18日〜4月18日
会場:上海証大現代美術館
住所:上海市芳甸路199弄28号
参加アーティスト:アダッド・ハンナ、アラ・ヨウニス、アンネ・センスタッド、バーバラ・エーデルスタイン、カン・シン、チャン・クー、チェン・ハンファン、チェン・ゾウ&ジャン・シャオリン、ドン・ウェンシャン、ドゥアン・ヨンジュン、エリサ・マーチェシーニ、ガブリエラ・マシエル、ガオ・ミンヤン、グ・ウェンダ、グァン・ファイビン、ゲリラ・ガールズ・オン・ツアー、グオ・リジュン、ミュージアム・イン・プログレス、ハートビート・ササキ、ヘ・チャンヤオ、ヘイドラン・ホルツフェインド、フアン・デフア、フアン・クイ、ロスリシャム・イズメイルakaイゼ、ジェン・デニケ、リ・ミン、リ・ムー、リ・チャン、リャン・シャオジ、リウ・ジン、リディア・パナス、マイダー・ロペス、マイケル・ユアン、坂野充学、モ・チャオルー、ラズヴァン・ボティス、レン・ジエ、レン・チャン、ロミー・アチタヴ、シーン・ラスペット、シ・チン、スティーレンズ・マチュー、スザンヌ・M・ウィンターリング、ティファニー・チャン、タッチ・デザイン(パン・ジェンファン、ザオ・ジエ、ル・ピンユェン)、トゥー・ガールズ・ワーキング、ユートピア・グループ(ドン・ダーフェイ、ヘ・ハイ)、ヴィベケ・ジェンセン、ウォジェク・ジレウィク、ウ・ガオジョン、ウ・ジュンヨン、ヤン・ジュン、ヤン・ガンナン、ヤン・ジアン&サンドラ・カンツ、ヤン・リーツァイ、ヤン・ヨン、ヤップ・サウビン、ユ・ジ、ユ・スードン、ツァン・フイ、ツァン・ジャンジュン、ザオ・ザオ、ジュ・シーユン
主催:上海証大現代美術館
ガブリエラ・マシエル
1977年7月29日、ブラジル・リオデジャネイロ生まれのブラジル人現代アーティスト。
絵画、彫刻、ビデオや写真のインスタレーションなど多様なメディアを用いて、2000年より展示を行う。90年代後半に創作活動を始めて以来、彼女はいくつかの異なる「時期」を通過してきた。ガブリエラの創作コンセプトは、かつては社会的不均衡や、ずれを描き出すものであったが、最近では文化の歴史的衝突と混合現象を表現するものへと移り変わっている。彼女の作品は、身体動作に柔軟に影響を受けた、解体と再建による物理的変化というアイデアに満ちあふれ、それを作品にはっきりと表現している。彼女はあらゆる意味で表現の境界線を超えるアーティスト。ハイテクとローテクを融合し、世界中で様々な分野のアーティスト達とコラボレーションを行っている。
Text: Biljana Ciric, a curator in Shanghai
Translation: Shiori Saito