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ケイコ+マナブ「ハート・オブ・シェイプ」展

HAPPENINGText: Wakana Kawahito

自分が小人になったような気分だ。背丈の2倍以上はあるだろう。大きな紙がいくつも積み重なることで会場が埋め尽くされていて、しかもそれが、金や銀のキラキラした紙で作られたハートや星ときているのだ。子どもの頃に画用紙で作っていたような形が大きくなって、そこの中に入ったり、くぐり抜けたりすることができる。まるで、おとぎの国に来たみたいな不思議な感覚に襲われる。

KEIKO+MANABU展「Heart of Shapes」
Photo: © Takumi Ota

「大人の秘密基地」というテーマでこのインスタレーションを作ったのは、建築学科出身の内山敬子と沢瀬学のユニット、KEIKO+MANABU。「アクセサリーから都市計画まで」をコンセプトに、プロダクト、グラフィック、インテリア、建築、都市計画までその守備範囲は広く、活動範囲も世界ベースだ。

全部で40個ほどのオブジェは綿密に計算され、ディスプレイされている。紙を断裁するなどの準備で約3週間、その3週間のうちの最後の7〜10日間ほどは同時並行で組み立ても行った。制作は、紙の提供をしている王子製紙の広い体育館で作られたそう。

KEIKO+MANABU展「Heart of Shapes」
Photo: © Takumi Ota

紙は、板紙というチョコレートを包装する中敷に使われる再生紙を使用した。この会期中に使われた紙は、展覧会が終わるとまた再生紙へと戻り他のものに生まれ変わっていく。建築という一回作ったら何年もそこに存在し続けるものとは違い、3ヶ月間だけの建築物。

これまではハードな素材を使うことが多かった彼らが、今回は素材に紙を選んだ。

『建築やインテリアの時には、まず紙などで縮小模型を作り、最後に実物をコンクリート、鉄、木などで作ります。一方で、一年程前から、短期間の展覧会の展示ブースを紙で作ったり、紙で壁面に作った大きなアートワークが一年近く経ってもしっかりしているのを見て、紙の可能性には気づいていました。そこで、すごく大きくて、厚みもしっかりある紙があれば紙を素材とした空間デザインを提案できるのではと考えました。いろいろと探しているうちに、銀座・王子製紙本社にある「OJI PAPER LIBRARY」で、板紙と出会いました。それは再生紙でできていて、プロシードという金銀キラキラの華やかな紙なのに、再びリサイクルができるのです。つまりこの展示会期が終了した後は、廃棄物がほとんどでないということです。このことも是非コンセプトとして表現したく、この紙を選びました。』

彼らが普段、空間デザインをする時は、金槌でドンドンやったり溶接やクレーンでつり上げる等、マッチョな剛の力を必要とするのだが、今回は最後まで、エアリーな柔の力だけで作り上げた。

KEIKO+MANABU展「Heart of Shapes」
Photo: © Takumi Ota

『さっきまでペラペラの2次元で床に横たわっていたものが、ふわっと拡げながら立ち上げると、3次元の形として存在します。なにか風をデザインするような、その風をふっと一瞬でひとつのかたちに落着かせるような、静かな柔らかい感覚が今でも残っています。』

このようなインスタレーション形式での初の個展について、『紙でしか作れない柔らかな空間デザインを実現することができて、それが実際的な感覚として体の中に残ったのは素敵で不思議な体験でした。それに、子どもの遊び場のような空間を、年齢性別問わず皆さんが楽しんでくださること、特に中二階に上って振り向いた瞬間に、驚きとともに素敵な笑顔を見せてくださることが、何より嬉しい』と語る。
今後は、この「Heart of Shapes」展で得た形と空間の感覚を、街づくりや建築に生かせたら面白いなと考えているそう。

うーん、だんだんみていたらクッキーが作りたくなった。そんなワクワクした気分にさせてくれる展示だ。

KEIKO + MANABU「Heart of Shapes」展
会期:2008年11月22日〜2009年2月8日
時間:13:00〜20:00(不定休)
会場:DIESEL DENIM GALLERY AOYAMA 2F
住所:東京都港区南青山6-3-3
TEL:03-6418-5323
主催:DIESEL JAPAN
キュレーター:高橋正明(ブライズヘッド)
https://www.diesel.co.jp/denimgallery

Text: Wakana Kawahito

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