堤由匡「ディジット」展

HAPPENINGText: Miki Matsumoto

イタリアのプレミアム・カジュアル・ブランドであるDIESELは、「For Successful Living」をコンセプトとして、アパレルに留まらず、店舗に併設したギャラリーやカフェ、音楽プロジェクトといった多彩な取り組みを展開し、独自のライフスタイルを提案し続けている。中でも家具や照明を扱うホームコレクションライン「Successful Living for DIESEL」は、MOROSO(家具)、FOSCARINI(照明)、ZUCCHI(テキスタイル)といったイタリア老舗メーカーとコラボレーションした商品を発表しており、デザインと品質の両面で高い評価を得ている。DIESELのコンセプトストアであるDIESEL SHIBUYA地下にあるホームコレクションエリアでは、建築家や空間デザイナーによる「Successful Living for DIESEL」のアイテムを用いたストアインスタレーションを2011年8月より展開しているが、建築デザインチーム「KEIKO+MANABU」に続く第2弾として、建築家である堤由匡氏による「DIGIT」展を現在行っている。

堤由匡「ディジット」
Photo: Kanta Ushio

堤由匡(1978年福岡生まれ)氏は、東京大学工学部建築学科卒業後に北京へと移り、北京のSAKO建築設計工社勤務を経て、2009年に堤由匡建築設計工作室を設立、現在も北京を拠点に活動している気鋭の建築家だ。ロッテルダム・ビエンナーレやヴィトラ・デザイン・ミュージアムでの展覧会に参加する他、大規模なビルから店舗まで様々なプロジェクトに取り組む多彩な活動で知られる。常識にとらわれない自由な発想で一人一人の個性を発揮することをコンセプトとするDIESELだが、今回堤氏が手がけたインスタレーションも、まさに個々の家具の個性を際立たせる展示となっている。

「『モノを見せる』とは一体どういうことなのか?」

今回のプロジェクトにあたって堤氏が向き合ったのが、この素朴な問いだ。単なる空間インスタレーションではなく、実際に販売をしている店舗内で行う以上、効果的な商品陳列について考える必要がある。「空間演出」と「効果的な商品陳列」を同時に実現するために堤氏が提案するのは、今までに見たこともないような新たな商品陳列の方法だ。

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Photo: Kanta Ushio

「通常、部屋の周囲は固い物質でできており、そこに何らかの方法でモノを固定するのが一般的な手法だ。すなわち『置く』『掛ける』『吊るす』。しかし、もし自由に変化できる壁面があるならば、そこにモノを『埋める』という第4の手法が発生する。モノが埋まった状態というのは、例えば、崖に掘り込まれた石窟であったり、溶岩に閉じ込められた何億年も昔の化石であったり、つまり『モノと背景が一体化した状態」にある。これを商品陳列に応用すれば、商品と空間が一体化した展示方法へと昇華できるのではないか。」
(作家によるコンセプト紹介文より引用)

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Photo: Kanta Ushio

積極的に前面に出し、その存在を強調すべき商品を「埋める」という逆転の発想。そこから生まれたのが、モノの特徴にあわせて自由に動かすことのできる可変壁面である。04.jpg

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