サラ・イレンベルガー × 木之村美穂「リアリティ&ファンタジー」展
HAPPENINGText: Ayami Ueda
渋谷・明治通り沿いに位置する「DIESEL SHIBUYA」は世界でも初となるDIESELの大型コンセプトストアであり、その地下のフロアにあるDIESEL ART GALLERYでは世界中から様々なジャンルのアーティストを招いて年4回のアート展を開催している。老若男女から支持されるファッションブランドが手がけるギャラリーとあって、そのセレクションはユニークでセンセーショナルだ。
今年5月からは、ベルリンを拠点に活動するビジュアル・アーティストであるサラ・イレンベルガーとロサンゼルスをベースにグローバルに活躍するクリエイティブ・ディレクターの木之村美穂による展覧会が開催されている。2011年にベルリンの出版社ゲシュタルテンからリリースされた作品集「Sarah Illenberger」(サラ・イレンベルガー)に注目した木之村美穂がキュレーター&フィルムディレクションを担当し、革新的なクリエイションの日本初上陸が実現した。
「リアリティ&ファンタジー」と題されたこの展覧会ではアーティストのバラエティに富んだ作品と遊び心を見せることをコンセプトにしており、誰もが日常で使い慣れた道具や見慣れた風景に新たな命を吹き込む独特の世界観を体験することができる。「ストレンジ・フルーツ」と呼ばれる自主プロジェクトを皮切りに、果物や野菜、雑誌の切り抜き、金属、テキスタイル、紙、木材などのシンプルで身近な素材を巧みに使って描くまだ見たことのない物語が紡ぎ出された。
本展で見られるサラ・イレンベルガーの作品は生活に馴染みのある物たちを元の素材と対比する材料で再構築したものが多くを占める。毛で覆われたリンゴ、タイヤのトーテムポール、ニットで作った臓器、野菜で模られたドレス、唐辛子が炎になったライター、スイカの種の雨、ザクロで作られた手榴弾、お弁当カップでできたヘッドフォンなどがみずみずしい色彩と緻密なバランスでもって構成されている。あらゆる事物に対する既成概念が取り払われたとき、それらの持つ意味は揺らぎオリジナルな視点が次々と生まれる。
彼女は普段身の回りにあるものからインスピレーションを得ると言い、フリーマーケットで見つけるアンティークからウェブ上の画像まで新旧問わずその視野は広がっている。自然のもので人工物を再現することやその逆もあり、そこには文明とナチュラルの共存を楽しむ目線が垣間見える。
また5年間に渡って雑誌で仕事をしていた経験から使用色を選ぶことにおいて人目をひくことを重要視し、物体自体のシンプルなイメージを引き立てる対照的な背景色を使って印象的なシーンを完成させている。作品タイトルの随所に散りばめられたユーモア溢れる言葉遊びも見所の一つだ。彼女は世界中を旅して様々な文化やトレンドに触れながら常に新鮮で上質な表現を提供することを目指している。
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