MERCE DEATH

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Merce Death メルセデァスひとつひとつのギターリフをループで紡ぎ合わせていくプレイスタイルは、まるでピクセルをひとつひとつ重ね描き出すグラフィックの様だ。その独特の演奏スタイルゆえに、音だけを聴くよりも演奏する姿もセットで見る方が楽しめる。音だけを聴いていると、独りで演奏しているとは想像もつかないが、演奏する姿を見れば納得できる。エフェクターを切り替えるタイミングやループをセットするタイミング。そのひとつひとつがリズムの中に組み込まれ音楽を作り出す。
彼の活動はギタープレイだけに留まらない。ウェブデザイン、グラフィックデザインなど、デザイナーとしても活躍する。「Cornelius x Merce Death x polo-Really x Google Map x YouTube」では彼の非凡なデザインセンスをみることが出来る。ミュージッククリップでありながら触って音を動かしコーネリアスの音の世界に入り込むことができる。
Merce Deathとしての活動、また、デザイナーとして彼の作品がどのように生み出されるのか話を聞いてみた。

Merce Deathという名前について教えてください。

本当は友人3人でバンドをやろうとしていて、そのバンド名の話をしている時に『じゃあメルセデスの“デス”が“death”ってのは?』みたいな感じでゆるく決まった名前でした。それを僕が一人で“GIG”をやり始めた時に、深く考えずに使い始めて、いつのまにかもう5年も使ってる・・という感じです。その名前を考えた人には今でも『勝手に使いやがって』と怒られたりします(笑)。

ソロプロジェクトという形と“GIG”という形のライブパフォーマンスにこだわる理由は?

Merce Deathっていうのは要するに、ギターを使って一人遊びをしてるところを公開形式でやっている、という事だと思うんです。だから、基本的には一人で十分というか、大目的は自分が楽しむ事なんで。あとは、一人で一生懸命やってる感じって、ちょっと滑稽ですよね。大好きなギタリストで、ボブログ三世って人がいるんですけど、彼なんかは電話の受話器がついたヘルメットをかぶって、バスドラどすどす踏みながら高速ブルースギターを奏でて絶叫するんですけど、もうなんていうか、『なんで、わざわざそんな事一人でやろうと思ったのさ?笑』って突っ込みたくもなりつつ、どんどん引き込まれるし、めちゃめちゃカッコいいんです。スクエアプッシャーなんかもそうですよね。あとはロンサムオーガニストって人も楽器5つくらいいっぺんに弾いてたりして、笑えるんだけどカッコいい。
僕は性格的にカッコいいだけのものよりも、どこか笑えたり突っ込みどころがある方が好きなので、バンド形式では無く一人でやる事を選んだというのはあると思います。もちろんジャムセッションにはジャムセッションの面白さがあるので、それはそれで大好きなんですけどね。

あと現実的なところだと、一人でやってるメリットはGIGのブッキングが凄く楽なんです。バンド全員の予定聞かなくていいから。だからかなり忙しい時でも、GIGのその瞬間だけスケジュールを空けておけば、イベントに参加できるんです。これは仕事をしながら音楽活動をしていく上ではけっこうでかいです。

Merce Death GIG at Super Deluxe

影響を受けたアーティストは?

ギタリストとしての心の師匠は、ジェフベック先生とジミヘンドリクス先生です。70年代の音楽はとにかくいろいろ聴きました。ファンクも好きだし、フォーキーなものも好きだし、ブルース、カントリー、ジャズ、ほんとうにいろいろ。で、一時は70年代のフランクザッパのジャズロックの感じがとにかく好きで、「HOT RATS」とかかけながら、一緒にギター弾いて遊んだりしてました。で、90年代の中盤くらいにベックのライブを見て、なんか今の音楽も面白いかもと思いはじめて、その後くらいにトータスの「TNT」を聴いて、けっこう衝撃を受けたというか、ぜんぜんカッコいい音楽今もあるじゃん!という感じで。そこからは、ポストロックやエレクトロニカと呼ばれるところをいろいろ聴いて、今はバトルズとか、スリーピングピープルくらいちょっと激しい感じも好きなんで、僕の演奏もそんな感じになってると思います(笑)。

ギターリフをつないでいく演奏するスタイルはMIDIや打ち込みのエレクトリックサウンドに通じるものがありますが、ギターリフは毎演奏違うようですが、即興演奏ですか?

即興です。よく演奏前に何を弾くかを決めていないのは不安では無いのか?という事を聞かれるのですが、僕にとっては『いつ間違えるかわからない不安』と戦いながら演奏する方がよっぽど苦痛なんです。キメのフレーズとか絶対間違えるので(笑)。もちろん、弾ききった時の達成感がある事は経験上知っていますが、それよりも自分も予想していなかった展開が次々に生まれてくる事の方が重要というか。一応毎回新しい事をやろうと思ってやっているので、フレーズのかぶせ方とかも自分にとっても意外な組み合わせにトライしてみたら、がっつりはまった!みたいな時には、一気に興奮するし、さらにフレーズを積み重ねてそれが次々にうまくいくとどんどん自分のテンションが上がってくるのが、自分でも楽しいんです。

マッシュアップコンテンツ「Cornelius x Merce Death x polo-Really x Google Map x YouTube」について教えてください。

ミュージシャンでありウェブデザイナーの友人polo-Really氏から、サウンドアンドレコーディングという雑誌が主催のコーネリアスのリミックス&ミュージックビデオコンテストの話を聞きました。
アイディアを考え始めた時に、Merce Deathとpolo-Reallyとコーネリアスの音源が、ユーザーという第三者が介入するかたちでリミックスされ、それは毎回違う結果が生まれるんだけど、そこに残るのはコーネリアスの世界観である、という「構造」が面白いんじゃないかと思い立って、すぐにpolo-Really氏にメールをして、そしたら彼は Google Map 使ったら面白くない?みたいな感じで、どんどんアイディアを膨らませていって、一気に完成させていった感じです。作品が完成した時は二人で『なんか、これやばくない?』みたいな感じで凄く興奮してました。

結果として、規定外の作品であるにもかかわらず、ミュージックビデオ部門で「ぶっちぎりで優勝」というとても光栄な結果を受けました。素直にすごく嬉しかったし、「インタラクティブ」と「音」という関係が一部のウェブ業界だけでは無く、きちんと『音楽』として評価された事で、新たな可能性を感じています。

※ちなみに、2006年後半にローンチされた時には「Re-mix 2.0」というタイトルでしたが、2.0という言葉があまりにも消費されてしまった現在、僕らが意図するところとだいぶズレてきている事から「Cornelius x Merce Death x polo-Really x Google Map x YouTube」というタイトルに変更しています。

Merce Death以外にもウェブデザイン、グラフィックデザインなどの活動をされてますが、重点を置いている部分は?
また、今まで関わったプロジェクトで記憶に残る・印象的なプロジェクトは何ですか?

基本的には全て同じです。僕の中で一番しっくり来る言葉は「デザイナー」で、何らかのコミュニケーションをいろんな方法を使ってデザインするのが好きなだけなんです。ただその中でもウェブを使ったコミュニケーションは恐ろしい早さで発展していってるので、そこの側で活動しているのがとてもエキサイティングだと思っているので、必然的にウェブがらみの活動がバランス的に今は多くなっている感じです。

ウェブサイトの制作では毎回新しい事にトライしていたのでどれも思い出深いですが、2003年度に作ったSonyのWalkmanのサイトは、コアコンセプトを納得いくかたちで昇華でき、結果としてカンヌ広告祭で銀賞を獲得しました。賞はあくまで副産物でしか無いのですが、当時の自分にとても自信を与えてくれた、思い出深いプロジェクトです。
実はそのサイトでもpolo-Really氏と音楽的な実験をしていました。表現しようと思ったのは、ウォークマンのヘッドホンの外側の音でした。フィールドレコーディングしてきた素材を、細切れにし、それと音階ごとに録音した様々な楽器の音を、Flashが自動生成して常にランダムな音楽が流れるという仕組みで、当時はデータ量もそれほど持てない環境の中でとても大きなチャレンジでした。

今後、CDやDVDなどレコーディングした物での作品発表する予定はありますか?

映像のアーカイブはどんどん増やして行きたいです。以前はmp3で音源をアップしていたのですが、即興であるとか、ギターだけでやってるとかが伝わりにくかったんです。今はXactiを使って、ほぼ毎回GIGの記録はとるようにしてるので、それをどんどんアーカイブ化していきたいです。でもそれはあくまでもGIGに来てもらうためのサンプルとしてですけど。
ちなみに数年前からiPodビデオ対応になっているので、iPodを買ったのはいいけどコンテンツを持ってないと言う方、ぜひダウンロードしてお楽しみください。無料ですので(笑)。

CDやDVDはもし需要が高くなれば、という感じですかね。自分の中での優先順位は低いです。

エフェクターやギターは何種類使ってますか?

純粋に音にエフェクトをかけるためのペダルは、オーバドライブとオートワウの二つだけで、あとはボリュームペダルとループステーション(Roland RC-50)という、ループマシンです。

ギターは中学校の時に先輩から3000円で買ったSquireの安物です。でもギターって、高い安いよりも、弾かれてるか弾かれてないかで音が全然違うと思うんです。あと、パーツ類は数年前にごっそり新しいものに入れ替えたので、とても快適だし良い音が出てると思ってます。

個人的には、いろいろな楽器を使っていろんな音を出すより、ギターだけでいろんな音を出す方がストイックでカッコいいし、音がオリジナルになるんじゃないかと思って、今はこのセットから変える予定はあまり無いです。強いて言うなら最近、カオシレーターという小型シンセを買ったので、面白い使い方できたらいいかなとは思っていますが、まだわからないです。

CANONについて教えてください。

これは、YouTubeで話題になった「Amateur – Lasse Gjertsen」というビデオの映像編集上で音楽を作り上げる、という考え方にインスパイアされて作った作品です。

Amateur – Lasse Gjertsen

以前からRecシリーズという音源を作っていて、それは例えば3分程度ギターで単音のフレーズを数回に分けて弾き、それを後から編集上で合わせる事で生まれる偶然を楽しむものでした。その考え方を発展させて、数回に分けて弾いていたフレーズを1回だけにして、それを編集上で1小節ずつ遅らせる事で、音楽として成立するんじゃないか、という実験をしてみたところビジュアルも含めて面白かったので、いくつかのバージョンを作りました。

CANON by Merce Death

そして、さらにその考え方を今度はリアルタイムでできるかもしれないという事で、最近MAX/MSPを勉強し始めたという友人のko-hey-hey氏に相談して、『Real Time CANON』ができました。

Real Time Canon Test

リアルタイムCANONはパフォーマンスを伴う表現なので、僕自身の動きも含めてまだまだ改良の余地はありますが、今後面白いかたちで発展させていければと思っています。

今後の活動を教えてください。

今までと変わらず、なるべくいろんなところでGIGをしたいです。去年は初めての海外公演をフィレンツェでやる事ができたので、今年もどこか海外でやれたらいいなと思ってます。
あとは、一人でも沢山の人に聴いてもらえるといいなと思っているので、できれば今年はどこかのフェスとか出たいです。フジロックとか、海外だとソナーとかATPとか参加できたら楽しそうだな~と思います。関係者の方、出演依頼は随時受け付け中なので、気軽にメールください!(笑)

Text: Hiroshi Kotake

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