第52回 ヴェネツィア・ビエンナーレ

HAPPENINGText: Kana Sunayama

史上初のアメリカ人美術批評家、ロバート・ストーをディレクターに迎え、「Think with the Senses. Feel with the Mind. Art in the present tense.」(感覚で考えよう。思考で感じよう。現在形のアート。)というタイトルを掲げて開催された2007年の第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ

第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ
Sigmar Polke © La Biennale di Venezia, 2007

ヴェネツィア・ビエンナーレとは、今日世界中に雨後の筍のように出現しているビエンナーレのなかでも110年もの歴史を持ち、 今の現代美術を代表するアーティストたちの作品が紹介される2年に一度の大国際芸術祭である。(ビエンナーレとはイタリア語で「二年に一度」を指す。)

第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ
Giovanni Anselmo, Dove le stelle si avvicinano di una spanna in più mentre la terra si orienta, 2004-2007. Pietre, terra, ago magnetico. Misure variabili. / Stones, round, magnetic needle. Collezione dell’artista/ collection of the artist Galleria d’Arte Moderna, Bologna, 2006. Photo: Ela Bialkowska. Courtesy Galleria d’Arte Moderna di Bologna

メイン会場である、昔の船製作工場を再活用した「アルセナーレ」と30ヶ国のパビリオンをその敷地内にもつ「ジャルディーニ」、そしてヴェネチアの街中に点在する、独自のパビリオンを持たない国々の47を数えるパビリオンと、同時期開催のビエンナーレ・オフと呼ばれる様々な企画展によって構成される。

毎回各ディレクターがテーマを設定し、独自の今日におけるアートや現代社会に関する見解を示し、世界が期待と厳しい批判の目で接するのは、アルセナーレとジャルディーニ内のイタリアン・パビリオンと呼ばれる二大会場である。このふたつの会場は同じディレクターによってキュレーションされるものだが、会場別に違ったテーマが掲げられてビエンナーレが開催されることが多い。しかし第52回目の今回、ロバート・ストーは両会場でひとつのテーマによるビエンナーレを私たちに突きつけてきた。もちろん会場が変わることによって、テーマは同じでも展示の雰囲気はまったく異なる。

第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ
Robert Ryman

ジャルディーニのイタリアン・パビリオンでは、世界で既に大御所の地位を獲得している現代アーティストたちの作品が目立った。特にミニマルアートやコンセプチュアルアートの代表作家である、ジグマー・ポルケ、ゲルハルト・リヒター、ロバート・ライマン、エルズワース・ケリー、ラオウル・カイザー、ルイーズ・ブルジョワなどの抽象平面作品や、ソル・ルウィット、フレッド・サンドバック、ジョヴァンニ・アンセルモ、フェリックス・ゴンザレス=トレスのインスタレーション作品などは、欧米のどの街の現代美術館に行っても出会える今日、もうこれらをまたここヴェネツィアで観るのはうんざりなような気がしていたにも関わらず、やはり私たちにその完璧なる美しさを見せ付けてくる。また絵画作品の展示の多さも書き留めておきたい。

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