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地下鉄アレクサンダープラッツ・アート展

HAPPENINGText: Yoshito Maeoka

アートフェア、ボーデ美術館の開館、レベッカ・ホルン個展等々10月のベルリンは色々なイベントが目白押しだったが、今回は、地下鉄アレクサンダープラッツ駅構内で行われた、少し突拍子も無い、そして強かな展覧会を取り上げようと思う。

私がこの展覧会の存在に気付いたのは、U8のホームで地下鉄が来るのを待っていた時の事だった。いつもの様に遠くから地下鉄がやってくる音がし、到着に際してホームの端へ歩みを進め、電車がホームにあらわれた次の瞬間、突然センセーショナルな曲が辺り一面に鳴り響き、私はあたりを見回してしまった。

それはあたかも、主要な登場人物が劇中に登場したかのようで、それまで頭の片隅でぼんやり考えていた事も何処かに吹き飛んでしまった。この仕掛人はイスタンブール生まれベルリン育ちのアーティスト、アイゼ・エルクメンだった。彼女はイスタンブールにある音楽アーカイヴより曲を選び、電車の到着に合わせて曲が鳴り響く様設置した。彼女の試みは、いつもの日常とドラマチックに予想を裏切る事を結びつけ、対比することに他ならなかった。

その後、別の日にU8のホームから別の場所に移動した際、いつもは何も無い通路の片隅に、どうした訳かちょっとした人だかりができていた事に気付いた。その人だかりは花束やぬいぐるみ、蝋燭などが雑然と並んだ祭壇の様なものを取り囲んでおり、人々はしばしそれらについて観察、談笑していた。

祭壇には、著述家インゲボルク・バッハマンの写真やコラージュ、文章等が並べられており、彼女へオマージュが捧げられていた。それはあたかもバッハマンがこの場で死したかの様な印象を受けたが、実際調べてみると、彼女はベルリンに滞在したものの、その後プラハ、ボヘミアへと生活の場を移している。しかしながら、アーティストであるトマス・ヒルシュホルンの設置したこの祭壇が、彼女についての記憶を喚起した事はまぎれも無い事実である。彼はこれまでもそれらの人々の記憶の喚起として、ピエト・モンドリアン、レイモンド・カーヴァー等に捧げるこのような祭壇を様々な街角で展開してきた。

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