アルフレッド・マルティネス

HAPPENINGText: Rei Inamoto

ある金曜の夜、友人から電話がかかってきて、あるギャラリーのオープニングにちょっと行ってみないかと誘われた。どんな内容かと聞くと、ドローイングとイラストレーションだという。特にすることもなかったので、チェルシーにある、そのギャラリーに足を運んでみた。

ギャラリーに入ってみると、雑な感じのするドローイングが並んでいた。男性のポートレートが多くあり、ノートサイズのものから、天井の高さほどあるものまで、サイズは様々だった。よく見てみると、ダークブラウンのラッカーのようなもので、描かれていた。絵は、雑に見えるけれども、それらは、芸術性を兼ね備えたアーティストに描かれたものに見えた。ポートレートとして描かれている男達は、みんな似たような服を着ていた。ふと、ギャラリーを見渡してみると、それらの絵は、人ではなく、銃だということに気がついた。

ぼんやりと歩いていると、友人が私を見つけ、この展覧会のバックグラウンドを話してくれた。彼によると、ここにある絵は、今現在、監獄にいる囚人が描いたものだという。

1、2年前、バスキアの贋作で、逮捕されたアーティストの記事があった。そのうちのいくつかは、まるで本物同様で、10万ドル以上で売られていたそうだ。そのアーティストの名は、アルフレッド・マルティネス。そう、このギャラリーの絵は、彼の作品だ。

彼は監獄にいるので、紙やインクになかなか触れることはできない。それで彼は、監獄の中で手に入れることができる本や、新聞紙から混凝紙を作り、彼だけのキャンバスを作ったのだ。そして、彼の画材はというと、コーヒーや身の回りにある、あらゆる液体だったのだ、と友人は教えてくれた。

今年に入ってすぐ、彼は、銃の絵を描いたがために、危険人物とみなされ、独房へ送られたそうだ。それに反抗し、彼は物をまったく食べず、狭い独房で与えられた食事は全てトイレに流した。55日後、体重は激減し、145kgあった体重は、84kgになった。2003年4月8日、看守らは生命を維持する為に、マルティネスに力づくで食べさせ始めた。

絵の値段は、相当な価格がついており、1000ドルから1万ドルする。バスキアとまではいかないが、マルティネスもある日、富と名声を得る日がくるかもしれない。彼を監獄送りにした原因で、というのも皮肉な話だが。

Text: Rei Inamoto
Translation: Naoko Fukushi

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