スリーブ・アート展

HAPPENINGText: Aya Muto

音楽とアートのカップリングは、昨日今日に始まったものではない。しかしテクノロジーが発達するにつれ、アルバムジャケットと音楽の関係は、きわめて機能的な無機的なものへと変遷していった事実は否めない。12インチのレコードスリーブからCDジャケットへ。そしていまやmp3という脅威のデジタルファイルとなって、アルバムカバーアートはその肉体的キャンバスを事実上失った。そこで立ち上がったのは一週間に何千枚もの12インチ、7インチレコードジャケットをぱたぱたとサバくDJ軍団、ダブラブの主唱者、マーク・マクネリアスことフロスティ、そして多くのダブラブフライヤー・デザイン仕掛人、ブランディー・フラワーである。


© Up Our Sleeve

レコード独特のノスタルジアを反映した12インチ四方の無地白のスリーブがクリエイターたちの手に渡りはじめたのが今年の2月。大きくなって帰ってきたキャンバスにそれぞれ一点もののアートがくり広げられ、5月にはかなりの数の作品が二人の前に積み上がったという。

普段は中にある音に忠実に作られるカバーアート。このダブラブ・カバーズプロジェクトは特定の音のためのデザインではなく、それぞれのアーティストが自由にスリーブにアプローチ。立体電車線路模型もあれば、鳥小屋もある。それでも2Dの作品が90%占め、そこから一晩だけの架空のレコードショップを意識してインスタレーションすることを思い付いた180点近い作品を手にとっては観察する。スポンサーのレッドブル(リポビタンDを強くしたような強壮ドリンク。アルコールと合わせればノックアウト系ドリンクに!)とウォッカのカクテルに千鳥足になる光景以外は、まさにレコードショップそのものであった。


© Up Our Sleeve

ウェブラジオのダブラブ、その目指すところは良質の音に基づいた日常を築きあげること。地元音楽シーンへの貢献、他都市での伝導に留まらず、コミュニティに還元する機能を常に研究している。ダブラブの共同発起人のジョン・バックの意向で地元の子供たちに世界を知ってもらおうと、ナショナル・ジオグラフィックの世界地図が配られた(スプラウト・プロジェクト)のもそのひとつ。

今回のイベントも音楽とアートのショーケースを越えたところの、世界規模でのコミュニティ意識を大いに示唆した催しだったといえる。マイク・ミルズ、シェパード・フェリー、(写真家の)B+ といった大物アーティストに混じり、ソウル・ウィリアムズ、ミア・ドイ・トッド、ディダラスなどのミュージシャンの名も見え隠れ。もちろん若いアーティストたちの力作も目白押し。12インチに精いっぱい自分の世界を表現したその真摯がどの作品からも伝わってくる。これはキュレーターのフロスティとフラワーの人望によるところが大きい。約10時間にも及んだイベントの間中、二人のところには友人やアーティストがひっきりなしに集まっていた。「僕らは楽しんでるだけだよ」と二人はあくまで謙遜する。


© Up Our Sleeve

「ポジティブな音楽主導のライフスタイル」ダブラブの掲げるシンプル且つ崇高なスローガンは、彼らの手が触れるもの全てにちょっとした変化をもたらす。あくまでも本質にこだわった生存を目指すダブラブは、インディペンデントに運営。このスリーブもサンフランシスコ、ニューヨークと行脚した後には、オリジナル本が製作され、スリーブ自体もウェブサイトを通して競り落とされることになっている。一部はダブラブの未来へ投資され、一部は意義のある社会的寄付を考察中。目にポップな楽しいスリーブの象徴するレコードカルチャーは実に深い所まで根を張っている。ぜひ会場に足を運んで手に取って「作品」に見入ってもらいたい宵の集いであった。

Up Our Sleeve – The Dublab Covers Project
Curated by Brandy Flower & Frosty
会場:Inshallah Gallery
住所:244 S. Main St., Los Angeles, CA 90012
https://www.upoursleeve.org

Text: Aya Muto
Photos: Katsuo Design

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フェルナンド・トロッカ
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