トランスメディアーレ 2005

HAPPENING

トランスメディアーレは、1988年のビデオアートイベントを発端とし、この経験的な世界を測るテクノロジーを理解し熟考しようと追い求めるアーティスト達の参加により、最も大規模なアートフェスティバルの1つとして成長を遂げてきた。


今年のフェスティバルのテーマである“ベーシック”は、様々な水準において我々に影響を及ぼす無数のテクノロジーと関連のある新しいメディアアートを再定義し、「あなたのカルチャーの基礎は何か?あなたの現実はデジタルかアナログか?あなたは倫理的か、それとも審美的か?」などの疑問から答えを導くよう、アーティストに強いている。しかし私にとっては、そこまでこのテーマの意味を理解しようと懸命に努力することではなく、ただこの国際的な新しいメディアの世界から生み出される最新の視覚物、聴覚物を、取り入れて吸収する事がポイントなのであった。

インスタレーション、ワークショップ、レクチャー、そしてパフォーマンスは、凝縮された10日間に渡り、昼間と夕方のパフォーマンスや上映会の場所を提供する「ハウス・オブ・ワールド・カルチャーズ」や、夜間のイベントに向けたベルリンの洞窟のような倉庫作りのクラブ、「マリア」というホットスポットにて行われた。


HAUS DER KULTUR DER WELT, SKY EAR

フェスティバルは、オープニングスピーチとパーティ、そして、ウスマン・ハーク(イギリス)による「スカイ・イヤー」と題する、とても期待に満ちたライブアートパフォーマンスと共に開幕となった。そのインスタレーションを見るために外に列をつくった人々は、携帯電話番号が書かれた小さな紙を渡された。その携帯電話のコールをきっかけにして、大量のヘリウムバルーンが、揺らめいて変化する彩色ライトと共にゆっくりと夜空に舞い上がるのだった。

恥ずかしながら、私の携帯電話はわずか2セント分の通話時間しか残されておらず、私はダイヤルをしてこのインタラクションに参加する事ができなかった。しかし、形の無い固まりが空から位置を変えて傾き来る様を、首を後ろにのばしながら眺めるのは(骨まで凍みる寒さに立ち向かう事を除いては)十分に楽しかった。それはまるで、芝生の上でオーバーオールを着てヘッドフォンをする2人の男に、しっかりとつかまれた凧の糸のように操られていた。

同じく、観客の参加をテーマにしたものに、日本人アーティストのミカミ、イチカワセイコ、ソウタによる「グラビセルズ」があった。観客は、広いタイル張りの正方形のスペースを歩き回るよう求められた。それは、隣接した壁に映し出された地形地図の上に、その人の体重や姿勢のベクトル跡が即座に作り出されるという仕組みであった。ほとんどの人が、ステップを踏んだり体重を移動させたりと、ただそっとその創作に触れていただけである上に、たくさんの人が一度にそれを行ったため、個々の動きを区別するのはとても困難となった。私は、より激しい働きかけが必要であると気付いたので、そのセラミックタイルの上に強く着地するために高く飛び上がり、私の姿勢がすぐに現れるその壁に、美しいベクトルの波を作った。(より強い働きかけによってのみ明白になる、 作品の限界や隠された秘密を試す事は大抵面白いので、インタラクティブアートに対して恥ずかしがったり怖がったりしない事をそこから学んだ。)


GRAVICELLS

この展覧会の中の私のもう1つのお気に入りは、ドイツ出身のロイ・ニクラスによる「ポン・メカニック」である。「ポン」は、初期に作られたコンピューターゲームの1つとして広く知られている。この展覧会でニクラスは、完全にそのゲームのアナログの機械部分を取り除いて再構築することで、ポンのアイディアをユーモアたっぷりに前進(もしくは後退)させた。2人のプレイヤーが両端に立ち、プレキシガラスでできた表面を、滑るように行ったり来たりするキューブに当たらないようにしながら、レバーを操作して小さな板を折り返し動かす。これはソフトウェアに匹敵するハードウェアの珍しい例であり、このような高雅で寛大な機会を組み立てる事がどれだけ複雑かを考えるとそれは、ぞっとする程である。


KNOWLEDGE

ワークショップスペースのまさに入口には、製品が置かれたスーパーマーケットの棚を構成した別のインタラクティブアート作品、ジェームス・パテン(アメリカ)による「ノーリッジ」が位置していた。今回のインタラクティブの挑戦は、「コーポレイト・フォールアウト・ディレクターズ」というバーコードリーダーがついたベージュの箱の装置で、ゆっくりとそれぞれの製品をスキャンするというものだ。その装置は、決まった製品の上を通過すると連続した発信音を放ち、音が大きくなればなる程、その製品の製造会社は道徳基準にかなっていないとみなされた。これから買おうとする日用品についても、詳細な情報を得た上での決断をしない事には、もう言い訳ができなくなるであろう…。

展覧会会場の、暗い角の方へさらに進み、私はイギリスの「ボーダム・リサーチ」という団体の「オーナメンタル・バグ・ガーデン」という素晴らしい作品を発見した。厚いガラスの上面と、ステンレススチールで縁取りがなされ、壁の目の高さに位置するその平らなスクリーンディスプレイは、コンピュータースクリーンというよりも、まるでミクロのデジタル世界を覗く窓のようであった。無数の虫のような形をしたものが、画素化した庭の中で忙しく飛び回って渦を巻き、動くたびに不思議な音を発した。このコンピューターが生む生態システムはとても美しく魅惑的で、実際に私は、かなりの長い時間それに惹き付けられてしまっていた。


TURNED

夕方のパフォーマンスプログラムの中にある、クリスチャン・ジーグラー(ドイツ)が創設したハウス・オブ・ワールド・カルチャーズという劇場のマルチメディアパフォーマンス、「ターン」のために、私は早くから席を予約していた。1人の女性ダンサーの動きが、リアルタイムでカメラのセットに捉えられ、大きなスクリーンに映し出された。その動きはばらばらになって加工処理され、ステージ後方で場所や時間を切り替えながら、前方の彼女と複雑な対照をなした。


CHILLOUT ROOM

昼間のプログラムで行われていたパフォーマンスやワークショップの全てを見て回るのは、とても骨の折れる仕事だった。1つ、逃してしまってとても悲しい想いをしたのが、参加者にそれぞれ自分のロボットを組み立てて作る機会を与えていた「アナログ・ロボット」のワークショップである。そのワークショップでできたロボットのうちの2つが、展覧会会場に展示されたが、とても不格好な歩行をしていたとは言え、お互いにぶつかり合って、絡まったワイヤーとコンピューター部分から騒々しく音をたてるその電子生物には、なにか心を惹き付けるものがあった。

日が暮れると、無能なものから狂人、そしてその中間に至るまで、全ての種類の生き物が、東の先のクラブトランスメディアーレの開催地である「マリア・アン・ウーファー」に現れた。ベルリンの岩で作られたそのクラブは、倉庫作りの外観から、ビデオ映写のちらつく多目的広場に姿を変え、その変貌は、2つのメインパフォーマンス地帯に挟まれたリラクゼーション地帯やレコード店にさえも及んだ。

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