トランスメディアーレ 2004
今年で17回目となるドイツ・ベルリンで行なわれるメディア・アートのフェスティバル、トランスメディアーレが、ベルリンの二つの会場をメインに開催された。今回のテーマは「フライ・ユートピア!」。フェスティバルの内容は二つのカテゴリーに分かれており、一つは、世界文化交流館で行なわれるメディア・アートを主に取り扱い、カンファレンス、スクリーミング、ワークショップその他各展覧会やアーティストのパフォーマンスなどが行なわれる。
クラブ・トランスメディアーレと銘打たれたカテゴリーでは、マリア・オストバンホフをメイン会場にエレクトロニックミュージックとまたそれらに関連付けられたVJなどのビジュアルアーツを主に取り扱い、毎日違ったテーマ、コンセプトの元にアーティストをピックアップし行なわれる。両イベントを合わせると1月30日から2月7日まで、9日間という比較的長いアートイベントとなる。またこのイベントと同時期にはベルリン映画祭というヨーロッパを代表する映画祭等も行なわれ、ベルリンの長い冬を彩る二大イベントにトランスメディアーレも育ちつつあるようだ。
イベントの規模が大きいので、こちらも見るものをある程度絞って、日程などを調整しなければならない。今回は、クラブ・トランスメディアーレを中心にチェックすることになった。
1月30日夜に日本から到着し、すぐ荷物を宿泊先に預け、一路クラブ・トランスメディアーレの会場マリアへ。この日のライブアクトはファーベン、リチャード・ディバイン、モードセレクターなどの面々。マリアという会場は、比較的ベルリンにあっても大きなクラブで、元々あった倉庫か工場を改装したようなつくり。以前は同じ駅の反対側にあったが移転した。扱う音楽は様々だが、よくベルリンのレーベル、ベーシック・チャンネルやチェインリアクション、モノレイクなどがイベントをしているような場所だ。ちょっとしたイリーガルパーティーを感じさせる雰囲気も持っていて結構硬派なクラブといったところ。
さすがにオープニングイベントだけあって、会場には少し興奮した熱気を感じることができる。入った瞬間ライブをしていたのはファーベン。ヤン・ヤネリックとしての名義でも知られ、ここ数年のミニマル・テクノ、エレクトロニカ・ダブシーンに大きな影響を与えたであろうアーティストの一人。
Safety Scissors
ラップトップを前に、淡々とミニマルな電子音を演奏するさまは貫禄さえ漂わせ、会場を音と時間の世界へとシフトさせていく。その後の、セイフティー・シザーズによる柔らかく暖かい、電子音とギター、彼自身のボーカルによるポップな演奏を挟み、この日一番過激で破壊的なインダストリアル・サウンドで会場を一色に塗りつぶしたリチャード・ディバイン。
Richard Devine
近年、ラップ・トップ一台でパフォーマンスするアーティストが増え、物珍しさも消えライブパフォーマンスといった側面で少し物足りなさを感じることが多いが、彼はそれさえも吹き飛ばしてしまう暴風雨のような音で会場を巻き込み、それに加え見るものを惹きつける表情や動きで、ラップ・トップ一台でもエンターテイメンとできると力強く力説しているようだった。音自体は好みが分かれそうな超高速インダストリアル・ドラムン・ベース。
Modeselektor
最後を締めたのは、ベルリンのレーベル、ビッチ・コントロールなどからリリースしているモードセレクターの二人組み。エレクトロニカ・ヒップ・ホップとカテゴライズされる彼らの音楽は、電子音とディレイを基調としたリズム遊びと時たま入る気持ちの良いメロディーが特徴。もう少し分かりやすく説明すると、アフリカの雄大な景色とグルーヴとエレクトロニクスをここしかないといったポイントで結びつけたような音。ビートもそれほど速くなく4時間位心地よくゆっくりと踊れてしまう、癖が無いようでいて有る魅力的なもの。リチャード・ディバインにさらわれた砂浜を優しくゆっくりと整えてくれるように4時過ぎの会場をゆっくりチル・ダウン。
ベルリンのトランス・ポーテーション・システムはバス、トラム、Sバーン(鉄道)、Uバーン(地下鉄)とかなり細かいところまで市内を網羅しており、深夜もナイトバスやナイトトラムなども稼動している。週末の深夜はこれらに加えSバーン、Uバーンも稼動しており比較的若者が遊びやすい環境となっている。ぜひこの様なシステムは世界各大都市にも導入して欲しいものだ。帰る交通手段がなくマンガ喫茶や路上に朝方までいなければならない惨めな状況などが避けられるからだ。
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