トランスメディアーレ 2008

HAPPENINGText: Yoshito Maeoka

年例に比べて暖かいベルリンでは、1月末にトランスメディアーレ 08が開催された。トランスメディアーレとは、毎年ベルリンで開催される、メディアアートの現在を展望するアート・フェスティバルである。会場は前年までのアカデミー・デア・キュンステからハウス・デア・クルトゥア・デア・ヴェルトに移行。前年より広い会場には、相変わらず先端のメディア・アートに関心を向けるより多くの人達であふれかえっていた。トランスメディアーレ 2008

内容も、メディアアートという多様な表現を差す言葉通り多岐に渡り、映像作品の上映に始まり、写真作品、インスタレーション、プロジェクトのプレゼンテーション、ライブパフォーマンス等が、1月29日から2月3日までの6日間に渡って繰り広げられた。

トランスメディアーレ 2008
Electrobutique

今年は「Conspire」そうサブタイトルを付けている。昨今のトランスメディアーレでの展示や基調講演でも度々話題となる、デジタルメディアを制する事が優位にこの時代を制する、そのような分析が「Conspire」(つまり“共謀”)というキーワードを導きだしたようだ。

それでは目についた展示物を中心に紹介していこうと思う。

エントランスを奥に入ると、会場中央のラウンジに至る。そこには、このフェスティバルの為に設えられた簡易ながらも目を引く近未来的な仕切りで空間が仕切られていた。その所々にはモニターが設置されており、その前に黒いタイヤのような固まりが横たわっていた。鑑賞者はその上に横たわり、ゆったりとしたソファの上でくつろぐ様に映像を鑑賞する事ができた。しきりに囲まれた中央部分にはコンピュータに接続された液晶モニターが机の上に並べられており、プレゼンテーションを鑑賞したり、ウェブにアクセスする事ができた。

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Janez Janša

このプレゼンテーションのなかでもひと際目を引いたのが、Flashを利用したヤネス・ヤンシャと名乗る3人のアーティストのパフォーマンスのドキュメンテーションだった。彼らは署名(サイン)の有効性、とりわけ公共の場での役割をテーマにしており、2007年に3人とも同姓同名のヤネス・ヤンシャに改名をし、複製とオリジナル性について探求してきた。このプロジェクトでは、GPSをそれぞれ携帯し彼ら自身の動きを追跡する事により、ホロコースト記念碑での歩行の軌跡で彼らの「署名」を浮き上がらせていた。

トランスメディアーレ 2008
Electrobutique

ラウンジ脇を入ると、エレクトロブティックの展示品が目についた。エレクトロブティックはギャラリスト、アーティストによって構成されるカンパニーで、過去20年の成熟したオープンソースを基にした情報技術をアート作品と融合させたプロダクトを制作している。今回の展示では、メガネの形をしたモニターや、帯状になった電光掲示板等が展示されていた。モニターには、作品中央に小さく設置されたCCDカメラから取り入られた映像をリアルタイムに加工した映像が出力される仕組みになっていた。

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