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トランスメディアーレ 2005

HAPPENINGText: Peta Jenkin

この展覧会の中の私のもう一つのお気に入りは、ドイツ出身のロイ・ニクラスによる「ポン・メカニック」である。「ポン」は、初期に作られたコンピューターゲームの一つとして広く知られている。この展覧会でニクラスは、完全にそのゲームのアナログの機械部分を取り除いて再構築することで、ポンのアイディアをユーモアたっぷりに前進(もしくは後退)させた。2人のプレイヤーが両端に立ち、プレキシガラスでできた表面を、滑るように行ったり来たりするキューブに当たらないようにしながら、レバーを操作して小さな板を折り返し動かす。これはソフトウェアに匹敵するハードウェアの珍しい例であり、このような高雅で寛大な機会を組み立てる事がどれだけ複雑かを考えるとそれは、ぞっとする程である。


James Patten, Knowledge

ワークショップスペースのまさに入口には、製品が置かれたスーパーマーケットの棚を構成した別のインタラクティブアート作品、ジェームス・パテン(アメリカ)による「ノーリッジ」が位置していた。今回のインタラクティブの挑戦は、「コーポレイト・フォールアウト・ディレクターズ」というバーコードリーダーがついたベージュの箱の装置で、ゆっくりとそれぞれの製品をスキャンするというものだ。その装置は、決まった製品の上を通過すると連続した発信音を放ち、音が大きくなればなる程、その製品の製造会社は道徳基準にかなっていないとみなされた。これから買おうとする日用品についても、詳細な情報を得た上での決断をしない事には、もう言い訳ができなくなるであろう…。

展覧会会場の、暗い角の方へさらに進み、私はイギリスのボーダム・リサーチという団体の「オーナメンタル・バグ・ガーデン」という素晴らしい作品を発見した。厚いガラスの上面と、ステンレススチールで縁取りがなされ、壁の目の高さに位置するその平らなスクリーンディスプレイは、コンピュータースクリーンというよりも、まるでミクロのデジタル世界を覗く窓のようであった。無数の虫のような形をしたものが、画素化した庭の中で忙しく飛び回って渦を巻き、動くたびに不思議な音を発した。このコンピューターが生む生態システムはとても美しく魅惑的で、実際に私は、かなりの長い時間それに惹き付けられてしまっていた。


Christian Ziegler, Turned

夕方のパフォーマンスプログラムの中にある、クリスチャン・ジーグラー(ドイツ)が創設したハウス・オブ・ワールド・カルチャーズという劇場のマルチメディアパフォーマンス、「ターン」のために、私は早くから席を予約していた。一人の女性ダンサーの動きが、リアルタイムでカメラのセットに捉えられ、大きなスクリーンに映し出された。その動きはばらばらになって加工処理され、ステージ後方で場所や時間を切り替えながら、前方の彼女と複雑な対照をなした。


Chillout Room

昼間のプログラムで行われていたパフォーマンスやワークショップの全てを見て回るのは、とても骨の折れる仕事だった。一つ、逃してしまってとても悲しい想いをしたのが、参加者にそれぞれ自分のロボットを組み立てて作る機会を与えていた「アナログ・ロボット」のワークショップである。そのワークショップでできたロボットのうちの2つが、展覧会会場に展示されたが、とても不格好な歩行をしていたとは言え、お互いにぶつかり合って、絡まったワイヤーとコンピューター部分から騒々しく音をたてるその電子生物には、なにか心を惹き付けるものがあった。

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