遠藤輝幸展「移り逝く時間」

HAPPENINGText: Shinichi Ishikawa

札幌住人の目で、東京のおもしろさを感じるのは地区ごとに街の個性があること。東京に詳しい知人にそのことをいうと、それはまったくあたりまえのことでその場所に住むなら、それらしくすることが義務というニュアンスの説明をしてくれた。土地に合った意識を持つ、というのは堅苦しい反面、街の表情を作るのには大切なことかもしれない。残念ながら、よくも悪くも札幌はそのあたりの意識は希薄だと思う。札幌には「ススキノ」という東京以北最大の繁華街があるが、ここに住んでいる人はあんまりいないと思うので生活環境としての紹介はしにくい。それに昼間のススキノって寂しいものです。

では、このシフトの拠点、札幌でもまったく地域エリアごとのカラーがないかといえば、そうでもない。今回は札幌の住宅街の街並みの散歩を楽しみたい人むけにガイドしてみる。もちろん、シフトの読者というところで考えてみると、カルチャーの香りがするところがいいだろう。それは、円山方面、地下鉄でいえば東西線「西18丁目駅」〜「宮の森駅」方面がお勧め。それらの駅から下車すると、整然と住宅が並びそれぞれの家は品格や歴史を感じさせる建築物が多い。それらに交じわるように、アンティークショップやカフェ、ギャラリー、こだわりの食料品店やフレンチ・レストランが散在している。まさに家を中心とした住宅街が構成されているエリアだ。散策にちょっと疲れたな、と思えば飲食店やお店に立ち寄る楽しみは、パルコや三越が立ち並ぶ中心部とは異なった落ち着いた楽しさがある。

カフェ+ギャラリー、ShiRdi(中央区南6条西23丁目)もまさに、そういうエリアに位置するお店のひとつ。古い住居を改造したようなお店で、アジアンな店の雰囲気が自然な感じで気取らない雰囲気を作り出している。まわりの住宅との地域的密着感があり、オシャレなお店ながら近所の人々が気軽に食事やお茶を楽しんでいる光景は、居心地の良い感じだ。2階に客席と共に独立したギャラリーがある。

去る、9月3日から14日まで、市内在住のアーティストで、ロケットビーンズ名義にて写真、グラフィックの活動している遠藤輝幸の個展「移り逝く時間」が開催された。同氏は自身のウェブサイトにて、写真や、フォトパネル、ミニブック、ポストカード、Tシャツなどのオリジナルアイテムの販売。日々の情景をコトバで映し出す詩的な「diary」を発表している。

今回の展覧会では、街の中のなにげない光景や、植物などの写真を布にプリント。それを木材で固定するというオリジナルのフレーム制作。布のまわりを焼くことによってひとつひとつが違った味を持たせアーティステックで有機的な存在感のあるものを作り出した。僕は写真やグラフィック作品における額というものは、最低限シンプルなものが好きで、昔からあるような、いわゆる「額縁」はそれほど興味はないが、この「焼いた布と木材」による一種のフレームは、非常にユニークでかつ、写真の作品本体を引き立てていると感じた。

今回の個展では、投票型オークションにてよって作品販売も実施。個展終了後の現在でも作品販売は行なっており、詳しくはサイトをチックしてもらうか、メールで問い合せて欲しい。展示風景の写真を見ていただければ分かると思いますが、部屋のインテリアとしても良い作品となっている。あなたの部屋のひとつどうだろう?

遠藤輝幸個展「移り逝く時間」
会期:2004年9月3日〜14日
会場:ShiRdi
住所:札幌市中央区南6条西23丁目
https://www.rocketbeans.com

Text: Shinichi Ishikawa
Photos: Shinichi Ishikawa

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