ブラインド・デイト

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

ベルリンにあるドイツ・グッゲンハイム美術館で1月31日、ベルリン在住の日本人アーティスト、小金沢健人によるパフォーマンスが行なわれた。主に映像作品を制作し、近年ではドローイングの作品集なども出版しているアーティストだ。こちらに住んで4年ほどが経ち、その間にも積極的な活動を行なっている。

この時期、ベルリン中の美術館が夜遅くまで開館しているという週末があり、そのイベントに関連したパフォーマンスであった。会場は、美術館に入ってすぐのところにある、天井が吹き抜けになっている長方形の広いスペース。その空間だけでも視覚的に気持ちのよいものだが、今回はそれを一杯に使っていて、いったい何が始まるのだろうかという緊張感がある。

演奏者は、ラスターノトンからのリリースや、トゥ・ロココ・ロットのメンバーとしても知られ、今回はエレクトロニクスを担当したロバート・リポック、クラリネット/コンピューターでクリストフ・クルツマン、ヴィブラフォンで斉藤易子、チューバでロビン・ヘイワード、そしてダンスで和田淳子。小金沢氏はこのパフォーマンスのディレクションとラジカセを媒体として参加している。演奏者およびダンサーはタイトルにあるように目隠しをしたスタイル。小金沢氏だけ一人目隠しをしていない。

これは、作者が視覚を奪うことによる演者自体の体験の変化や純粋化などを意図していたようだ。そして、演奏も即興演奏というリアルタイムのもの。楽曲が決まったものを演奏するのであれば目隠して演奏することも多少たやすいだろうが、暗闇のなかで音と触覚だけを頼りにその場で表現していくという行為はそれがどんなものであれエキサイティングなものだ。

いよいよパフォーマンスが始まったが、いっこうに音の出る気配は無い。しかしその様子も、見るものにとっては音を出してはいけないのではないかといった緊張感が生まれる。演者同様、耳を澄ませていなければいけないからだ。まるで耳を目にするような体験。

やがて、ちらほらと音が鳴り始める。なぜかこちらの引きつった緊張感も同時にとける。しかし、その音も微音で、遠いところで演奏している場所の音は判別できないくらい空間と溶け合ってしまっている。スペースは縦約30メートル、横約50メートルと比較的大きなスペースなので一番離れているところからだとまさに環境音としか呼べない音に変化してしまう。

環境と演奏される音がこういった効果も交じり合い、そのスペース自体が共鳴装置となり一つの音を作り出す。大音量で聴くより、より観客の感覚に訴えかけてくる。こういった効果も考慮していたのだろう。

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