E-1027 BERLIN
PEOPLEText: Jeremy Tai
もともと仕立をしていたそうですね、いつのことですか?
17才のときですから、かれこれ10年前になります。学校を辞めて、たまたま友達の紹介で仕立ての弟子入りをしたという経緯です。すぐに始めて1年半ほどそこで修業してその後、服飾デザインを本格的に学びたいと思ったのですが、うまくいきませんでした。
向いていなかったのですか?
ええ、理屈が多すぎて。
他の生徒より進んでいたのではありませんか?
そうですね、手仕事の技術に関してはそうでした。けれど、考え方としてはもっと違う方向に進みたかったのです。他の生徒とは違う環境から入ってくれば、自分のスタイルを見いだしやすいかもしれませんが。
同じ指導者の同じ影響下で100人が何かをするかわりに自分で自分のために何かする、そのため学校を辞め、シルクスクリーンや木工など全て伝統的な手作業で始めました。あまり服飾には関わらずにね、2、3年そういう欲求もありませんでした。それにまだ若かったのですよ。20才そこそこで何をしようかとはっきりと見極めるのは難しいことです。当時はパーティーやらスケートにのめりこんでました。他の仕事同様、服を作るにはしっかり訓練しなくてはなりません。やはり趣味程度ではだめなのです。
それでどういう経緯で服飾に還ってきたのですか?
アートというものに時間を費やしていて、服飾にもまた興味を持ち出したのです。さらに服には需要がありますからアートよりお金になりやすいという側面もありましたね
特別影響を受けたデザイナーは?
16才の頃、自分がファッションに興味があるということを自覚したのですが、テレビでゴルチェのショーを観たのです。もう10年とか15年とか前になりますが、ゴルチェは実に戦闘的でした。ファッションでもこのような表現があるのだということで非常に強い印象を受けました。また人間的にも魅力を感じます。
その後はコム・デ・ギャルソンです。10年ほど前に一緒に住んでいた友人がけっこう裕福で、いつも服を買い込んでたので、直に視る機会がありました。ファッションにおいては異質で大きな影響を受けました。
そういう影響からはもう脱したのですか?
いいえ、依然として素晴らしいと思っていますし、他のものをそうとは思えません。2、3の雑誌に目を通すだけですからあまり状況には詳しくありませんが。
現在は、仕事着それに古い戦争映画に興味があります。第二次大戦ものでいいものがあります。普通の映画でもですが。時には街中で何かを見つけだすこともありますが、基本的に映画の影響を受けています。50年代、60年代の古いものやパリの映画はいいですよ。服への直接的な影響はありませんがカトリーヌ・ドヌーブは理想的な映画女優です。でも、近いうちに発表しますよ。
「77」と「E-1027 BERLIN」とという2つのレーベルを展開させていますが、どうしてこのような名前なのですか?
「E-1027 BERLIN」は半年ほど前に始めたのですが、あまり実際に服は製作していませんでした。その後、また展開を始めたものです。この名前は家具デザイナーのアイリーン・グレイと関係しています。30年代に彼女はパリに住んでいたのですが、自分も半年前まで1年間住んでいました。そのときに、あるギャラリーで彼女の作品を見たのですが、非常に感銘を受けこれが現在の自分のスタイルとなっているのです。そのスタイルはアイリーン・グレイの家具のようなものです。ミニマルだが使い勝手がよい。彼女はパリに家を建てているのですがそこから、名付けました。
「77」の方はむしろ男性向けであまり高価ではありません。こちらはより実用的で仕事着を意識したつくりです。「E-1027 BERLIN」は限定製作で数に100、200と限りがあります。「77」は特注も可能ですし品質もいいものです。
今後の計画は?
ベルリンに店を持ちたいです。ドイツ国内でなにかしたいのです。ベルリンには他のヨーロッパの都市にはない何かがあるのです。しかし同時に厳しい状況もあるでしょう。パリやロンドンにも多くの若いデザイナーがいますが服を販売するのはそれほど難しくありません。ドイツではこれは難しいのです。あまりものが売れませんから。競争が厳しいというわけではないのですが、物が売れないのです。ドイツ人は、あまり国内にある良いものに目が向かず、いつも国外にばかり目を向けているのです。
Text: Jeremy Tai
Translation: Satoru Tanno