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ブラインド・デイト

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

こういったパフォーマンスが時間としては比較的長い3時間行なわれた。その間も、通常行なわれている美術館の展覧会に訪れる観客が入れ替わり立ち寄る。それさえも、このパフォーマンスの一部としてアクセントを加えていた。


© Manograph

人間の歩く音、ひそひそ声、グラスを落とす音や灰皿のすべる音。この場所でこの瞬間起こる出来事が全て「ブラインド・デート」という作品に溶け合い同化していく。環境、即興演奏、ダンスという要素が静かに静かに時を刻んでいく。始めから終わりまでいた観客、10分程だけいた観客、通り過ぎるだけでその場をすぐ立ち去った観客など様々だったが、それぞれ皆違う印象をもったことだろう。

演者達自身も「非常に困惑した」、「自由な気分で楽しかった」、「時間感覚が狂い、触覚が変化した」など小金沢氏本人がインタビューしたコメントを読むだけで様々だった。ダンサーの和田淳子にいたってはかなり普段とは違った身体感覚を味わっていたようで、客観したところから鳥瞰し音と環境を波乗りするように踊っていたという。

本人は、グラスがテーブルから落ち割れた音などが響き渡り、空間と演奏される音に混じりあったりするさまを注意深く聴き非常に楽しんでいたようだ。

この様に、空間、微音な即興演奏、フィールドレコーディング、ダンス、そして観客が溶け合ったり反発したりしながら、3時間という静かだが濃密な時間を作り出していた。観ていることしかできないと限定される観客も時間が経つごとにいつの間にか作品自体に影響していくというのは、大変面白い体験であった。作品としての完成度というよりは、有機的に変化していくさまを、観聴きし後にも先にも同じ作品は作ることができないという点でも貴重なものだろう。

これからの小金沢氏のスケジュールは未定だが、これからまた新しくどのような作品を作り出していくのか楽しみである。

Blind Date
日時:2004年1月31日(土)
会場:Guggenheim Museum, Berlin
住所:Unter den Linden 13-15, 10117 Berlin
出演:小金沢健人、和田淳子、ロバート・リポック、ブルクハルト・バインズ、ロビン・ヘイワード、クリストフ・クルツマン、斉藤易子
https://www.wohnmaschine.de

Text: Yasuharu Motomiya
Photos: Manograph

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