「ムービング・コンセプト」展

HAPPENINGText: Fann ZJ

生きていく上で、理解力と洞察力は、その人の精神を形成する段階では必要不可欠なものだ。人生を感受性豊かに表現するデザイナーの世界では、彼らの持つ見解と理解力は、他とは違う素晴らしい作品を生み出す原動力となる。

「ムービング・コンセプト」は、建築の新しい見解を紹介する学生による展覧会。例えば建築物の骨組みやそれを建てる目的といった、いわゆる良くある建築の要素を説明するのではなく、抽象的なアイディアをどんどん取り入れ、感受性豊かな視点や気持ちから生まれた具体的なコンセプトに焦点を当てるスタジオが中心となって開催されている。今回の展覧会では3つのプロジェクトをフィーチャー。始まりから終わりまで、事細かに説明がなされていた。

「12 Super Spores」は、それぞれの視点でシンガポールの街を探索し、それをまとめたプロジェクト。メンバーそれぞれが12時間という限られた時間の中で、人々が行き交う都市空間を体験し、2mx50cmの大きさのベニヤ板にその体験から感じたものを表現するというものだ。街の鼓動、そこでの探検、感触、においなどを表現することで、見る側はまるで自分が街の中にいるような錯角に襲われる。そして同時に、作者の街での体験が実体験としてそこで味わえるのだ。これまでは曖昧で抽象的だったシンガポールの街に対するイメージが、これらの作品を通じて、確固たるものになったのである。

また、これらの作品が次のチームの手に渡り、更に新たな展開を見つけたのは、この試みの特筆すべき点。「12 City-Home Settings」というプロジェクトでは、実際に完成に持ち込む前に十分な研究と分析が行われた。オブジェやモニュメントとして建築物を見るのではなく、考えるという経験を積むことに焦点が当てられているのだ。自分ではない他の人のシンガポールという街の経験を元に、建築的な探究が机いっぱいに広がる。

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