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ブエノス・アイレス現代美術展「コンテンポラリー」

HAPPENINGText: Gisella Lifchitz

昨年の11月から、今年一杯、ブエノスアイレス・ラテンアメリカ美術館(MALBA)では、5名のキュレーターによる、ローカルシーンで活動するアーティスト達の現代アート展が開催されている。MALBAは、真っ白な壁に包まれた、国際的なテイストが感じられる美術館。階段への最初の一歩を踏み締める直前から既に異国情緒が感じられる雰囲気だ。

「コンテンポラリー(現代)」というシリーズを展開しているこの展覧会。ディレクターのマルセロ・パチェコにより選出された、5名のゲストキュレーターによる企画展だ。キュレーターそれぞれが、アーティストの選出を担当し(アーティストは最低でも2名以上でなければならない)、アーティスト自身が持つ美と矛盾という、平和的な作品を紹介するというものだ。


Contemporary 2, Installation view

おそらく、コンテンポラリー2が、パチェコの胸に秘められたアイディアを、最も明確に表現したものではないかと思われる。担当は、キュレーターのラファエル・キッポリーニ。ギレルモ・ウエノ、ムミ(両者とも写真家)、ドーマ・コレクティブ(グラフィックアートとデザインを専門)という、3グループの作品をひとつの作品として展示を行った。キッポリーニに作品選出について伺ってみると『彼の周りには、優しさと利口さが感じられる雰囲気がある。それがギレルモという男。ドーマを知ったのは、今の僕の彼女との最初のデートの時に、彼女が持ってきたポストカードを見た時。 ムミのポートフォリオは僕のお気に入りなんだけど、彼女はドーマのファンでもあったんだ。ドーマと一緒に活動してみたい、という気持ちがムニにはあったらしく、それで彼女の作品に手を加えることになった。僕の心を揺さぶるような、でもまだあまり知名度がないアーティスト達を集めて、美の共存という試みの中に彼らを置いてみたかったんだ。』と語ってくれた。

この一風変わった組み合わせが、本来のキャラクターを比較してみる、という新しい結果をもたらす。もし仮に、これを違って視点で分析してみると、展覧会はもっと輝かしいものになるはずだ。そしてこのポイントこそ、ドーマが、合理的かつ科学技術的な猛威を、汚れたタンクのまん中におかれた、人間と、すでに亡くなっている彫刻家をまねた牛を通じて表現している。全てが一目で見えてしまうような社会における、社会的な暴力や自由の欠如は、オレンジ色の円錐形のコーンと、セキュリティ・カメラの間を実際にすり抜けてみることで、見抜くことができる。


Guillermo Ueno, Untiteled, 2002

平和や静寂といったものが感じられるのが、ギレルモ・ウエノの写真作品。彼のギャラリーにいると、まるで彼の自宅に来たような気分になってしまい、窓から差し込む光が私達を包み込むような感じ。彼の家族、そして彼を取り巻く色に遭遇するような訪問。そう感じた瞬間、MALBAはすでに、彼の作品の展示に適した場所に感じられた。

展覧会鑑賞も終盤に差し掛かった頃見えてきたのが、ムミの作品。これは、ドマとの共同作品だ。その冷たいイメージがあるお陰で、リアリティが未完成のままになっている。それを通じて、平静や不気味な気持ちが表現されている。展示室の一角にはテレビカメラが設置されており、それに映ろうと待ちわびる人たちの姿も。そんな中、ウエノの作品は最も光り輝いていたのではないだろうか。

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