BEAUTY展

HAPPENING

この夏フランスで最も重要なエキシビジョンが、フランス南部に位置する都市、アビニヨンで開催された。エキシビジョンのテーマは「 BEAUTY (美) 」。アートでは常に語られるコンセプトではあるが、アーティスト、開催地、アプローチなどの点でヴェネツィア・ビエンナーレとは一風違ったアプローチでのエキシビジョンとなった。


エキシビジョンは主に3つのメインエリアで開催され、その他小規模なものは街の至る所で展開。この街中を使って作品を展示するというアプローチは、あらゆる作品を目にすることができ、最も古典的なものからモダンなものへの移り変わりを表現し、たくさんの驚きを与えてくれるという点でとても面白いアプローチだ。

メイン会場の側では、多くのアーティストが教会やバー、個人の邸宅などで作品を展示していた。教会内のスペースを改造した「LA MONTE YOUNG」もそのひとつ。 一歩教会に足を踏み入れると、6 時間ノンストップでピアノを弾いている男のビデオ映像が迎えてくれる。もう1つは、回廊を使用してスライドと 16 ミリフィルムで個人的な家族の記録を表現したジョナス・メカスのエキシビジョン。主観的に美とは何かを表現していた。

アビニヨンの巨大な歴史的要塞「PALAIS DES PAPES」で行われたメインのエキシビジョンでは、アーティストの作品を彫刻やビデオ、写真など様々なフォームで展示。過去 10 年間におけるアイコンとして存在する2人の歴史的なコンテンポラリーアーティスト、ペトラルカとラウレのロマンスが、この特別な場所でのテーマとなっていた。

中でも、ジェフ・クーンズの巨大な彫刻 「SPRIT ROCKER」 が印象的だった。宮殿の中庭に設置されたこの作品は、馬とドラゴンの頭を持ち、そこからは花が咲き乱れていた。照明効果を使用したジェームズ・テュレルの「WIDE OUT」やアニッシュ・カプーアの建築空間「YELLOW」なども興味深かった。

他には、水と火を表現するビル・ヴィオラのビデオ作品 「THE CROSSING」 や、独自の解釈で宮殿のタペストリーを表現し、天井から吊るしたシュールな生き物で部屋を埋め尽くしたフランス人アーティスト、アネット・メサジェの作品 「EUX ET NOUS, NOUS ET EUX」、 コンピューターで制作されたイメージを使って新駄作スタイルでインディアンの神性を表現したピエールとジャイルズの作品、フランク・スカルティによる、コンバーチブルカーを自分の舌で洗車する男のユーモラスなビデオ「DIRTY CAR」や、さらには、18 世紀の彫刻「互いの腕を握りしめるラダとクリシュナ」、アレクサンダー・マックイーンの美術監修の下に撮影されたニック・ナイトの写真やアフリカ独特のヘアースタイルの写真など、決して派手ではないが印象的な作品を数多く目にすることができた。



The image upper left: © Kira Peron. The image above: © Nick Night.

美というコンセプトが、有名なアーティストに参加してもらうための言い訳となっているようなものもいくつかあった。今回のエキシビジョンで最もがっかりしたのは、クリスチャン・ラクロワによる街のデコレーション。明らかに彼は、才能をフルに発揮して彼に任せられた任務を遂行したとは到底思えなかった。

エキシビジョンの第2のパートは、「美」をおおまかに表現した宮殿の真横の部屋「LE JARDIN DES DOMS」で行われた。そこでは、自然の要素や物体が美的性質と共に表現されていた。
まず、ミステリアスで興味深かったのは、「AURELIA AURIA」。真っ暗な中に置かれた水槽の中で優雅に泳ぐ小さなクラゲや、鉱石(QUARTZ)、奇妙な形の虫(MEMBRACIDAE)などが進化していく様を表現していた。


The insect photograph above: © Michel Boulard

「LA BEAUTE」の第3のパートは、今回のエキシビジョンのために修復された電気工場「TRANSFO」で行われ、ニューテクノロジーや現在のファッション、音楽、ビデオなどの動向に熱心なアーティストが集結。楽しくカジュアルで、まるで「デジャヴ」のような感じを与え、僕的には今回のエキシビジョンで最高のパートだったように思う。

来場者は、各エキシビジョンで目新しく斬新なスペースを発見する。フランソワ・ロシュによって作られた入場門は、何千ものミネラルウォーターのボトルで構成され、タンクローリーのような感じになっていた。


The image above right: © N+N Corsino

この巨大な作品が置かれた場所の側では、巨大なビルディング群とグラフィティ作品が設置された。各ビル内では、写真/ビデオ、ファッション、マルチメディアなど、それぞれの分野に分かれて展開されていた。
1つ目の写真/ビデオのビルでは、フランク・スカーティによるフィルム作品を上映。そのひとつ、「CHICAGO FLIPPER」では、自分がシカゴの街を暴れまわるピンボールになったかのような感覚を体験することができた。激しいカメラワークピンボールマシンのノイズが印象的だった。

スティーブ・マックイーンの「DRUMROLL」は、ニューヨークで撮影されたもの。樽に3台のカメラ(両側に一台づつ、真ん中に一台)を設置し、樽を転がして街中を撮影。水平に並べられた 3台のスクリーンを見て 5分もたたないうちに、気持ちが悪くなってしまった。上の階では、 5人のヨーロッパの写真家が撮影した日本の田舎の風景が展示されていた。ヨーロッパにはない文化や美学を見せてくれた作品だった。


The image above: © Steve Mcqueen

ビルを出ると、「インベーダーモザイク」という作品の正面に自分がいるということに気付いた。フランス人アーティストによるこの作品では、有名なテレビゲーム「スペースインベーダー」をテーマにフランス中をインベーダーゲームのアイコンで埋めつくしていた。

少し離れた場所には、テクノ専門のラジオ局 RADIO FG による「GLOBAL TEKNO 2000」ビルがあり、静かでリラックスした雰囲気の中、ドイツ人アーティストとフランクフルトのグラフィックデザイナー「SAAS FEE」が、SUPERPOP や PINK ELLN などといったフランス人ミュージシャンと共にビジュアルスペース「ELECTRONIC DREAMPLANT」を築き上げていた。観客は自由にコンピューターを使ってプログラムをしたり、別の部屋でノンストップで上映され続けるフィルムやビデオクリップ、3Dアニメーションなどを楽しんでいた。

このメイン会場のまわりでは、線画のキャラクターで有名なエマニュエル・マビールやフォトグラファー、ピエールエマニュエル・ラストインなど、「テクノジェネレーション」と呼ばれるアーティスト達によるテクノミュージックのスライドショー「デトロイト VS ベルリン」が、ジェフ・ミルズの曲と共に上映されていた。
全体的には、「GLOBAL TEKNO 2000」展は、デジタルカルチャーと定義されるものの均等的な表現の中に多様性を見い出そうとしていたようだ。

別の場所では、椅子とテーブルとテレビのセットが置かれ、椅子を「身に付けた」モデル達によるファッションショーをテレビのモニターを通して見せるショーが行われた。このショーは、ファッションデザイナー、フセイン・チャラヤンの2000年秋冬コレクションで、ユーモアとクリエイティブ性という、明らかに異なる2つのものを融合していた。

最後のビルのテーマは、「DECORS A CORPS(外見と身体)」で、ファッションとSFにインスピレーションを受けた様々なデザイナーが、奇妙な物体、オーナメント、風景を展示。その中でも、いろいろなウィッグを制作したヘアーデザイナー、BARANBE、神秘的な物体をメークアップに取り入れた TOPOLINO、注射器の指輪に変形するものや性転換キットを制作した XITRON、透明な樹脂で作った脊椎などのオーナメントをロマンチックに展示したパトリック・ヴェイレットなどが印象的だった。

セラフィン・ ドュセリエールは、鏡と空気で膨らむ巨大な彫刻の間にビデオスペースを制作。その真後では、フィリップ・トリューシーの帽子展が行われていた。今回エキシビジョン全体としては、自己イメージのためのものであって、未来のファッションのアイデアを導くものだったように思う。

今回のテクノエキシビジョンで忘れてはならないのが、バーとレストランの屋台。ニエル・トロニ制作のボーリングのレーンが6台設置され、重い金属の球を小さな木製の球にいかに近付けることができるかを競うフランスのポピュラーなゲーム「PETANQUE」を楽しむことができ、最高のサンドウィッチとアイスパスティスと共に、会場の雰囲気をさらにカジュアルでリラックスしたものにしていた。

全体的には、今回のエキシビジョンはかなり楽しめるものだった。アビニヨン自体が美しい街だということもあり、また、エキシビジョンを様々な会場で行うことによって、各都市の良い点を発見することもでき、さらに7月の南フランスの天気も最高。残念ながら、あまり興味を持てない作品もいくつかあり、半数が展示するに値しないものだったように思う。作品の並べ方も影響したアーティストもいたようだ。

もちろん良いものもあった。多様なスタイルを1つにまとめることによって、普段目にしないようなものを発見することができた。個人的には、まず「TRANSFO」ヘ行き、PETANQUE を楽しんで、レストラン PASTIS でランチを食べ、午後は FGビルでビデオを見ることをお勧めする。また、今夏中、FG 主催による「エレクトロニカルミュージック」パーティーが、ローラン・ガルニエや MENTAL OVERDRIVE など有名なDJを迎えて開催予定。
アビニヨンの「BEAUTY」という言葉は、休暇を連想させる響きだ。

LA BEAUTE en AVIGNON
会期:2000年5月27日〜10月1日
http://www.2000enfrance.com

Text and Photo: Julien Villaret
Photo : © 2000 Flammarion, Julien Villaret
Translation: Mayumi Kaneko

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