「デザイン・カルチャー・ナウ」展
HAPPENINGText: Rei Inamoto
本質的には、自然を除いて僕達を取り囲むもの全ては、デザインされている。毎日着る服から自転車、本、その本を構成する文字に至るまで、日々の生活で出会うもの全てが、デザインされたものなのだ。クーパーヒューイット国立デザインミュージアムで開催されたスミソニアン・インスティテュートにより3年毎に国立デザインの新シリーズを送り出す最初の展覧会「デザイン・カルチャー・ナウ」では、“アメリカのコンテンポラリー・デザイン”について教えてくれるものとなった。
Greg Lynn, Hydrogen House, 1996, Model (Unbuilt)
83名のデザイナーを紹介する今回の展覧会は「アイディアの辞書」というテーマに基づいて、「流動的」「物質的」「ミニマル」「再生」「ブランド」「ローカル」「ナレーティブ」「アンビリーバブル」という8つのセクションでデザイン様式に関係なく分類。どのセクションでも、建築からプロダクトデザイン、グラフィックデザイン、ニューメディアまで、様々な作品を展示していた。
Herbst Lazar Bell, Zuzu’s Petals, 1998, Prototype, Digital Toy
最も興味深かったものは、ひとつのアイディアを反映する様々な異なる分野のデザインが一緒に並べられていた点だ。例えば、「ミニマル」セクションでは、3COMの携帯情報端末「パーム」の隣にケイト・スペードのおしゃれなハンドバッグ、そのまた隣にはジョン前田のポスターとインタラクティブモジュールといった感じ。展覧会では、このような並列が沢山見られ、いろいろな種類の作品を一度に見ることのできる良い機会となった。
Matt Flynn, Air Jordan XIII Sneaker, 1996, Drawing, Concept Design
展覧会の構成が魅力的なものであった一方で、見る者にとっては(少なくとも僕にとっては)あまりインパクトのあるものではなかった。IDマガジンの毎年恒例のデザインレビューからそのまま持ってきたような展覧会だった。また、この展覧会の問題のひとつは、有名な美術館がそうであるように、理論的、観念的なものにしようとしていたことだ。おそらく、自分達の内部戦略やその他の美術館の慣例を破るのを恐れているためだろうとは思うが、展覧会そのものを大袈裟な展覧会に仕立てあげようとしている。
Constantin Boym / Laurene Leon Boym, Strap Chair, 1999, Photo: Elie Posner, Courtesy of The Israel Museum
もう一つのつまらなかった点は、お粗末なニューメディアの表現。今回のショーでニューメディアとして分類されていた作品のほとんどは、有名なグループのものから選ばれていて、プリントデザイナーに、ウェブデザイナーを見下す理由を与えてしまうかのような、かなり弱い印象を与えた。
今回の展覧会全体としては、刺激的なものではないが、良いショーであり見る価値のあるものだったと思う。
National Design Triennial: Design Culture Now
会期:2000年3月7日(火)〜8月6日(日)
時間:10:00〜17:00(火曜日21:00まで、日曜日12:00から)
休館日:月曜日
会場:Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum
住所:2 East 91st Street, New York, NY 10128
入場料:$ 8.00
TEL:+1 212 8498400
https://www.si.edu/ndm/
Text: Rei Inamoto
Translation: Mayumi Kaneko