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サトシ・トミイエ

マライア・キャリー、マドンナ、マイケル・ジャクソン等、世界の名だたるアーティストの作品を手掛け、アンダーグラウンド、メジャーを股に掛け活躍するプロデューサーで、NY、イギリス、ドイツ、イタリア、ギリシャなど世界のトップクラブを定期的にツアーするDJとしても知られる、サトシ・トミイエ。その彼が満を持して発表したのが、「FULL LICK」だ。
約10年に及ぶキャリアを総括し作り上げられた作品を中心に、外から見た日本の音楽シーンについてインタビューしました。


今現在、拠点はニューヨークですよね。日本には年に何回ぐらい来られるんですか?

3、4回ぐらいですね。日本にはトータルで1ヶ月半いるかどうか、あとヨーロッパが倍ぐらい、3ヶ月くらいだから、3分の2ぐらいはニューヨークにいます。


初のリーダー作ということですが、アルバムとして今までリリースされなかった理由を教えて下さい。

ダンスミュージックは割とアルバムの音楽じゃないでしょう。だから別に全然やる気がなくて、ずっと長い間。2年くらい前に、違う形でやろうかなって思って。それでアルバムをやってみたっていう感じになって。もう同じことをずっとやってるのも、もういいだろうっていう感じかな。だから、誰かが何かやってそれが刺激になったとか、そういうことじゃなくて、自分自身の中でそういう風になっていったんじゃないかな。


初回盤は二枚組で「陰と陽」というタイトルですが、人間にある誰もが持ってる2面性や、トミイエさん自身が持ってる2面性、メジャー、アンダーグラウンドという活躍の場だったりとかっていう、いろんな部分がフィードバックしていると思います。

特にそこまで深い意味はないんだけど、ただ単にこう対比というか、影があるから明るい部分があるとかそういう感じ。逆にそうすると、夜があるから朝が来てほしいと思うし、そういう感じなんじゃないかな。僕自身、1つの音楽をやっているのが嫌いなので。曲調的に言うと、本当はもっとあったんだけど、とりとめがなくなるので、一応ハウスでくくれる感じにしたんですけど。ハウスじゃない曲っていうのは多分 2、3曲。印象に残る感じにはしたいなと思ったんで。


たくさんのミュージシャンが参加していますが、この人選はトミイエさんご自身で行ったんですか?また、印象深い方はいらっしゃいましたか?

そうですね。まあ人づてとかいうのもありますけど。基本的には人選は全部自分でやって。全員印象深いんですけど、意外性の部分だったら例えばケリー(KELLI ALI)とか、自分で出来たものが意外だったし、面白かったんじゃないかな。ダイアン(DIANE CHARLEMAGNE)もいい人だったし。とりあえず音楽的な意味でも作って行く上で刺激になった感じかな。いつもやってくれてる人は何となく結果は見えてるんだけど、逆に結果が見えてる部分で終わりたいっていうところがあったんだけど、初めてやった人はそういうちょっと違う感じが良かったんじゃないかなって思う。


日本人シンガーではACOさんが参加してますね。ACOさんのアルバムは以前から良く聞いてたんですか?

実はCDをもらってて、日本人、非日本人限らず、ずっと女性ボーカルをやってきたんで、聞いてて結局自分的に引っ掛かったのは彼女だけだったので、お願いしたんですよ。アルバムも3枚ぐらい持ってるかな。割とこう、ちょっと屈折した独特のテイストがあるので、それが僕は好きなんですけど。


今日本でも今までアンダーグラウンドだと言われていたクラブミュージックが、ここ5年くらいでメジャーとリンクする部分とかもたくさん出て来ていると思うんですが、トミイエさんから見て、日本のそういうシーンってどう思われますか?いい傾向だと思われますか?

いいと思いますよ。いわゆるコアな人だけでやってると絶対広がっていかないので。逆にそういう人は面白くないかもしれないけど、僕は広がっていく方がいいと思いますね。逆にかっこ悪いけど流行っちゃったみたいなのももちろん出てくるけど、なんか、訳分かんないけどかっこいいっていうのも出てくるから、その辺はまあ、色々あるかなって感じですかね。


実際、日本とアメリカ、イギリス、ヨーロッパ圏でのシーンの違いと言ったら、どの辺が一番大きいですか?

一番大きいのは、まあほんとに、英語と日本語の差ぐらい違います。(欧米の若い人は)割と通過儀礼というか、普通の子が必ず通るもの。例えば、日本で言うとカラオケみたいなものな感じがするので、その辺は違う感じ。日本は何となくちょっと気合いが入ってる感じがするから、クラバーになるみたいなことが。それの差かな。
割とヨーロッパとかは普通のMTVとかに普通にダンスミュージックのクリップがかかってるぐらいだから、本当に普通の音楽。ヘタしたら歌謡曲みたいな感じかな。やっぱりクラブシーンそのものも少し冒険しても、受け入れられる。日本は割と冒険できないところがあるので、クラブ人口が少ないから。例えば、東京だと出来ることが他の街に行くと、ちょっと辛かったりするから。みんな楽しもうとしてる姿勢があるからそれでいいんだけど、ちょっと変わったことやるとついて来れないというのはやっぱり人が少ないから。そういう意味でももう少しメジャーな部分も含めて、ダンスミュージックとかに関わってくる人が増えると、もっと面白くなると思います。


今、日本の話をして頂いたんですけど、日本に全然最初から興味がなくて、いきなり海外に出て行ったクリエイターとか、最近はネットとかも使われるようになったり、以前では考えられないような形でのデビューとかも増えてると思うんですが、実際トミイエさんがアメリカに行ったのは86年ぐらいですか?

いや、そんな前じゃないです。88年とか89年とか。当時は、電話のやり取りしかないから大変。あと、テープ。本当にテープしかないから、今みたいにデータをCDに焼いて送るようなことだって不可能だったし、そういう意味ではほんとにテクノロジーは進歩したけど、やってる人もその時に比べれば増えたし。その時ニューヨークに行った理由のひとつは、日本でやれる場所も、そこまで興味ある人もレコード会社にいなかったし、興味あっても理解してる人はいなかったし、とてもできる状況じゃなかった。そこであえているよりかはニューヨーク行っちゃった方が早かったから。


若い才能がどんどん海外へ出て行くことがいいことだと思いますか?

まあ、東京のスタイル、東京自身のダンスミュージックみたいなシーンを作るという意味では、出ていくと良くない事だけど、東京っていうか日本のね。それは微妙な感じではありますけど、その方がてっとり早いからみんなそうしちゃう訳でしょ。日本ではらちがあかないから。例えばポップミュージックにしてみれば、日本で売れてるポップミュージックって、基本的には日本とアジアはいくとしても、結構そういう人ってアメリカで成功したいとか、そういう方向に行く人が多いと思うんです。逆にダンスミュージックって日本で成功しようがないから、始めから海外へ行ってしまうっていうところがあるから、いつまでも音楽的なソフトは輸入ものっていうことになってしまう。そういう意味では、まあさっきの話にまた戻るけど、裾野が広がって、聞く人が増えて、やる人が増えれば、日本で回るわけじゃないですか。そうすると出て行かなくなるから。そのへんが、日本のシーンはそういう意味ではまだまだかなって気がします。


では、具体的にどうしたらいいと思いますか? 日本の音楽は。普通の人も一般的に聞けるようにするというのは、レコード会社もそういうソフトを出せばいいということでしょうか?

レコード会社がただ出すだけじゃダメで、それは今まで答えを出せた人はいないと思うね。まだ僕自身はそんなに日本を変えようと思ってやったわけじゃないので、ちゃんと考えたことないですけど、そうですね、どうしたらいいんだろうね。
まぁ、ヨーロッパの人にしてみればダンスミュージックっていうのは歌謡曲だから、それはもう、国民性の違いでもあるので、そこは少しづつ乗り越えて行くしかないと思うけど。いきなり本当にコアなクラブミュージックがメインストリームになり得ないから、日本には割と今R&B風な歌手の人がいっぱいいるけど、それを普通の状態にしてしまって、でもこのR&Bブームは多分もうすぐ終わると思うから、そういうところで根付かせるっていうことがいちばん重要じゃないかな。
以前、テクノブームみたいのもあったけど、割ともう少し下世話なやつだったでしょ。実はヨーロッパとかでもテクノは前よりかは盛んではないです。ドイツでもどっちかっていうと割とハウスの方が多分強いと思う。日本は割と今ヨーロッパで流行っているようなディスコっぽいハウスみたいなのが、何となく受け入れられない感じがして、自分でDJしてる感触だけど。あんまり反応が良くないからね。もう少しこう、言ってみればかっこ悪いニューヨークハードハウスみたいなやつ。基本的には何にも考えずに楽しむ感じだと思うんですけど。そういうのを日本で根付かせる。
要するに普通な状態っていうのは普通の人が聞いてる状態なんだけど、これが新しいからってブームにして終わっちゃうと、いつまでたっても何も変わらないってことですね。確かに10年かかって少しは良くなってるけど、日本はそんなに大きなパーティーはあんまり出来ないし。例えば、1万人規模のパーティーとかそんなに出来ないと思うから、そういうのが普通になってくれば、イギリス人がサッカー見に来るのとでっかいパーティーはそんなに変わらないと思うから、感覚として。やっぱり無理しようとしても続かないから。それで良くなって行くっていうか、広がって行ければいいんじゃないかなと思いますね。


今後の予定を教えてください。

夏はたぶんヨーロッパの方に行きっぱなしになって、ツアー。ツアーといっても出たり入ったりするんだけど、一回帰ったりするんだけど、同じアルバムが9月に出るので、ヨーロッパで。それのプロモーションとかも兼ねて、この後はシンガポール行くんですけど、来月ぐらいから。それから、イギリス、ドイツ、イタリア行ったりと、そういうのがちょっとあって、秋口まで続くと。で、合間にレコードをリミックスやったり12インチ作ったりしようかなと思ってます。


サトシ・トミイエ
東京生まれ。ニューヨーク在住。幼少時にキーボードを始め、学生時代にDJとしてデビュー。20歳の時に制作したデモ・テープがハウス・ミュージックの巨匠、フランキー・ナックルズに認められてニューヨークに渡る。英ポリグラムからフランキー・ナックルズ・プレゼンツ・サトシ・トミイエ・フューチャリング・ロバート・オーウェンス名義でリリースした「Tears」でデビュー。米『ビルボード』誌のダンスチャートで1位を獲得する。その後、フランキー・ナックルズ、“ミックス・マスター”デヴィッド・モラレスとともに世界ナンバー・ワン・プロダクション/リミックス・チームDef Mix Productionsの一員として活躍し、マイケル・ジャクソン、マドンナ、メアリー・J・ブライジ、U2、シンプリー・レッド、マライア・キャリーなど、欧米のメジャー・アーティストのリミックスを数多く手掛ける。
また、DJとしても世界を股に掛けて活躍しており、NY、イギリス、ドイツ、イタリア、ギリシャなど世界のトップクラブを定期的にツアーしている。現在、海外で活動する日本人DJの中でも、そのワールドワイドな活躍では群を抜いている。


Text: Kyota Hamaya

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