「アウト・オブ・フォーカス」展
優れた若い芸術家たちを発掘するために努力を続け、現代美術界に強大な影響力を与えているサーチ・ギャラリーにて写真展「アウト・オブ・フォーカス」が4月25日から7月22日まで開催されている。様々な国籍を持つ注目すべき38人の現代美術家たちの全館を使用した作品展示では、現代人の生活の様々な視点や状況が示されており、多くの議論を生んでいる。ジェンダーについてや、心と体の問題、記憶、トラウマ、家庭、社会など、現代社会の悩みについて感じとることができる。ファッション、ドキュメンタリー、広告、アートといった写真の伝統的な境界線は、ここでは無用だ。
Untitled, Marlo Pascual, 2010 © The Saatchi Gallery
ギャラリーの入り口に掲げられている「展示を仕切る壁やロープ等を使用していません。作品を守るため、お子様がお手を触れないようにお願い致します。」という案内文には、美術作品と観客の間に権威主義を取り払おうとするギャラリーの努力が見てとれる。実際、壁にもたれ掛けただけの作品や壁の写真から飛び出した立体作品など、展示において様々な試みが行われている。
Anonymous, Katy Grannan, Los Angeles, Boulevard 11, 2009 / printed 2011 © The Saatchi Gallery
展示は、「Anonymous」(匿名)という皮肉的なタイトルが付けられたケイティ・グラナンのポートレート作品ではじまる。被写体が普通の人ではないということを気付くことは難しくない。彼らの外見は、一般社会から疎外されたように見える。年老いた同性愛者は寂しそうに見え、弾力がない肥満体は美しくない。しかし、彼らの不快な容姿は、観客を惹き付ける魅力がある。彼女のポートレート作品は写した瞬間を通じ、その中の人生を読ませる写真の魅力を示している。
© The Saatchi Gallery
ケイティのポートレート作品に続き、 風景や物、文化的事象に対する様々な作品が展示されており、人生を暴露する写真とこれらの緊張感は、見る者に作家たちの悩みを共有させる。展示を見たあとには、この時代の群像についてのアーティストからの問いについて考えている自分を発見することになるだろう。本展では、「アウト・オブ・フォーカス」というタイトルの意味についての直接的な説明がなされていない。見る者が自分でその答えを探すように意図しているのだ。
出品作家は、デヴィッド・ヌーナン、マーロ・パスカル、マライア・ロバートソン、ハンナ・ソーテル、デヴィッド・ベンジャミン・シェリー、メレディス・スパークス、ハンナ・スターキー、ミシェル・アベレス、レオンス・ラファエル・アグボジロ、アダム・ブルームバーグ&オリバー・チャナリン、オラフ・ブルーニング、ジョニー・ブリッグス、エリーナ・ブロテルス、アンダース・クラウゼン、ット・コリショウ、J H エングストローム、ミッチ・エプスタイン、アンドレアス・ギフェラー、ジョン・ステザカー、ダニエル・ゴードン、ノエミ・ゴダール、ケイティ・グラナン、ルイス・ジスペール、マシュー・デイ・ジャクソン、クリス・レヴィン、マット・リップス、ライアン・マッギンレー、モハウ・モディサケン、ローレル・ナカダテ、 西野壮平、A L スタイナー、ミハエル・ソボツキー、うつゆみこ、サラ・ヴァンダービーク、ニコル・ウェルマーズ、ジェニファー・ウエスト、ピナル・ヨルカン。
OUT OF FOCUS: PHOTOGRAPHY
会期:2012年4月25日(水)〜7月22日(日)
時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
会場:SAATCHI GALLERY
住所:Duke of York’s HQ King’s Road, London SW3 4RY
入場無料
https://www.saatchi-gallery.co.uk
Text: Nari Hong
Translation: Satsuki Miyanishi