柚木沙弥郎 永遠のいま

HAPPENINGText: Alma Reyes

3章では、長野、岩手、岡山、静岡、島根、そしてインド、フランス、アメリカなどを旅した柚木の経験と発見を見ることができる。柚木は自身の色彩などに影響を与えた、その地域の工芸の形式文化を追求した。展示は、水彩画、色鉛筆・パステル画、版画、コラージュ、ブックデザイン、染織品、陶芸、ガラス絵、そして装飾タイルなどが並び、この巨匠の好奇心とダイナミズムに満ちた世界で埋め尽くされている。


柚木沙弥郎 左:《「開運堂」広告 型染原画》1998年頃 / 右:《「開運堂」広告 型染原画》2000年頃 開運堂蔵

1900年代後半、柚木は染色の可能性をさらに広げ、ガラス絵や、版画、絵本の挿絵、本の装丁、そして立体作品と表現の幅を広げた。例として、1980年から2003年にかけて開運堂のために制作した、風刺画のようなドローイングと文字を組み合わせた広告がある。


柚木沙弥郎《ブラックウェル(ウィンダミア)》2023年 個人蔵

101歳という最期の年に至るまで、柚木は制作をやめることはなかった。カフェやホテルなど商業空間のための制作など若い世代との協働も新たな刺激となった。《ブラックウェル(ウィンダミア)》(2023年)や、色鮮やかな構成でキッチンにまつわる事象を描いた《「DEAN & DELUCA」カフェのための作品原画》(2021年)などは、彼の最晩年の作品の一部である。彼の傑作は、困難がつづく時代にも、人々の暮らしを明るく彩り、楽しくさせるような表現を促した。


柚木沙弥郎《「DEAN & DELUCA」カフェのための作品原画》2021年 ディーン&デルーカ蔵 撮影:奥田正治

柚木は『毎日が新しい今日で、それを大切に積み重ねていくことで、いい人生になる』と述べている。

残念ながら、昨年逝去したが、柚木は生きるあらゆる側面に輝きと本質を常に見出していた。そのエネルギー、精神、そして光はこれからも残り続けるだろう。

柚木沙弥郎 永遠のいま
会期:2025年10月24日(金)〜12月21日(日)
開館時間:11:00〜19:00(入場は18:30まで)
休館日:月曜日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.operacity.jp

Text: Alma Reyes
Translation: Hoshino Yoshihara

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