エド・アトキンス展
HAPPENINGText: Victor Moreno
《ヒッサー》(2015)は、フロリダの男性がベッドの下に地割れが起きたことで行方不明になったという不気味なニュース記事から生まれた作品。この作品では、アトキンス自身のパフォーマンスでアニメーション化された男性の人物が、謝罪し、自慰行為を行い、地割れに落ちていく様子が描かれている。
Ed Atkins, Hisser, 2015, installation view, Tate Britain. Photo: Josh Croll © Tate Photography
作品は3つのスクリーンにまたがって展開され、スケール感覚を混乱させる。寝室は劇場の舞台と人形屋敷の両方を思わせるような空間となっている。アトキンズはこれらのデジタルバージョンを、彼が処理できない心理的な要素を扱うことができる存在として「代理体」と呼んでいる。彼は、自身の顔をキャラクターに投影し、『だから私もそこにいて、パフォーマンスをしている。そのキャラクターをマスクのように被っているんだ』と述べている。
Ed Atkins, Nurses Come and Go, But None for Me, 2024, installation view, Tate Britain. Photo: Josh Croll © Tate Photography
アトキンスの作品にはすべてに喪失が貫かれており、その最も個人的な表現が、彼の最新長編映画《Nurses Come and Go, But None for Me(看護師たちは行ったり来たりするが、私の所には来ない)》(2024年)に表れている。この映画では、トビー・ジョーンズがピーター役を演じ、アトキンスの父親が癌と診断されてから最後の6ヶ月間に書いた闘病日記を朗読する。朗読を終えたジョーンズは、病気のふりをして床に横になり、子供たちの遊びを再現する。その間、彼のパートナーであるクレア(サスキア・リーヴス)は、彼に魔法の薬を飲ませ、彼の顔をポストイットで覆う。
Ed Atkins, installation view, Tate Britain. Photo: Josh Croll © Tate Photography
展覧会では、アトキンスが自身の子供たちためにポストイットに描いた数多くのドローイングも展示されている。彼はこれらを「無限の創造性のミニチュア画像」や「感情を伝えるための小さな、苦労の跡が残る試み」と呼んでいる。これらのイラストは、喜びに満ち、遊び心があり、非現実的で、愛に溢れており、地図に記された伝説のように、私たちに物事の見方と感じ方を教えてくれる。
展覧会は、作品を部屋ごとに分割し、反復させたり、形式を変更したりと、反復と差異を構造的な手法として採用している。アトキンスは、「馴染みのあるものが奇異に感じられる感覚、逸脱、誤り、混乱」を創造したいと考えており、彼にとって、これは人生が実際いかに混沌としているかを表している。「経験するほど、人生はより複雑になり、制御不能になっていく」と。
現在ハンブルクで教鞭を執るアトキンスは、デジタルと現実の世界の間で生きるための私たちの不可欠なガイドとなっている。彼の作品は、デジタルな心でも傷つくことを証明し、人工的と本物の境界線が次第に消えていく時代において、乱雑で頑固な人間らしさを保つ意味を、誰よりも明確に示している。
Ed Atkins Exhibition
会期:2025年4月2日(水)〜8月25日(月)
開館時間:10:00〜18:00
会場:Tate Britain
住所:Millbank, London SW1P 4RG
TEL:+44 (0)20 7887 8888
https://www.tate.org.uk
Text: Victor Moreno
Translation: Saya Regalado
Photos: Josh Croll © Tate Photography
