タピオ・ヴィルカラ — 世界の果て

HAPPENINGText: Alma Reyes

「ヴェネチアの色」の章では、魅力的な色彩の花瓶、皿、瓶、その他のオブジェの数々を目の当たりにする。ヴィルカラは1965年、ヴェネチアのムラーノ島にあるヴェニーニのガラス工房に招かれた。そしてヴェネチアの工芸品に魅了され、足繁く通い職人らと協働制作を行った。「気泡」を意味する《ボッレ》(1967年)は、イタリアの吹きガラス技法「インカルモ」によって作られた。赤紫色、金、緑の色の組み合わせが実に見事である。


タピオ・ヴィルカラ《ボッレ》1967年 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art. © Ari Karttunen / EMMA

最後に、おそらくヴィルカラの最も傑出した作品であろう、ドリンキング・グラスセットの《ウルティマ・ツーレ》(1968年)の展示にたどり着く。展覧会ではスケッチの複写パネルとして展示されている木彫レリーフは、1967年のモントリオール万博で発表されたもので、ラップランドの荒野を流れる小川を視覚化したもの。皿、ボウル、グラスで構成されたガラス作品は、ラップランドで見た溶けおちる氷に着想を得て生みだしたもの。表面の模様は、ガラスの制作過程で生じてしまう凹凸を完璧にカモフラージュし、有機的な質感を生み出している。現在もイッタラのガラス工場でひとつひとつ手作業で作られており、フィンランドのデザインプロダクションならではの細部にまでこだわったクオリティが魅力だ。「ウルティマ・ツーレ」はラテン語で「世界の最北」を表す言葉で、ヴィルカラはそこから変化する自然の変容をイメージした。このコレクションは、1969年から今日に至るまで、フィンエアーのアメリカ路線で使用される食器の代名詞となった。


タピオ・ヴィルカラ《ウルティマ・ツーレ(ドリンキング・グラスのセット)》1968年 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art. © Ari Karttunen / EMMA

また、同じくフィンランドの陶芸家、ルート・ブリュックの作品も数点展示されている。ブリュックは1976年に夫が亡くなるまで、31年間ヴィルカラと結婚生活を送った。タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団は2003年に設立され、スカンジナビア芸術の旺盛な精神を広める活動を続けている。

タピオ・ヴィルカラ — 世界の果て
会期:2025年4月5日(土)〜6月15日(日)
開館時間:10:00〜18:00(金曜日は20:00まで)
休館日:月曜日(ただし5月5日、6月9日は開館)
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
TEL:03-3212-2485
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/

Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado
All works by Tapio Wirkkala © KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2024 C4780

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