モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン
HAPPENINGText: Alma Reyes
古賀春江《現実線を切る主智的表情》1931年(昭和6年)、株式会社西日本新聞社(福岡市美術館寄託)
前衛芸術家の古賀春江や河辺昌久も、機械的なイメージの表現でこの時代に頭角を現した。古賀の魅惑的な作品《現実線を切る主智的表情》(1931年)は、障害物を飛び越えるロボットのような馬乗りが男性用の乗馬服を身にまとった射手に狙われているという構図で、雲のない澄み切った青空のグラデーションと遠近感、光と影のコントラストも相まって絵全体からシュールレアリスムの緊張感が漂っている。
「モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン」展示風景より、空山基《Untitled_Sexy Robot type II floating/Untitled_Sexy Robot_Space traveler/Untitled_Sexy Robot_Space traveler》2022年、Courtesy of NANZUKA © Hajime Sorayama Photo: Ooki Jing
本展の最後のセクションでは、現代において機械文明やロボット、デジタル時代の視覚性をテーマに制作を行うアーティストを紹介し、現代の「モダン・タイムス」を考察する。パリ在住の作家ムニール・ファトゥミによる、自身のルーツであるアラブ世界の近代化をテーマとした映像作品、「ポスト・ヒューマン」の世界を思わせるロボットのような人物像を制作する空山基による近未来的な立体作品、そしてインターネットを使ったNFT作品を手掛けるラファエル・ローゼンダールによるデジタルとフィジカル(物理的)との境界線を問う高さ3メートルにおよぶレンチキュラー作品を展示。
ラウル・デュフィ《パリ》1937年、ポーラ美術館
その他にも、ラウル・デュフィ、ワシリー・カンディンスキー、クロード・モネ、キスリング、ロベール&ソニア・ドローネー、マリー・ローランサン、アメデオ・モディリアーニ、キース・ヴァン・ドンゲン、マン・レイ、エルザ・スキャパレッリ、マックス・エルンスト、ルネ・マグリットなど、当時活躍した多くの傑出したアーティストたちが、幅広いショーケースに華を添えている。
本展は、約100年前の機械と人間との様々な関係性から、コンピューターやインターネットが高度に発達し、AI(人工知能)が人々の生活を大きく変えようとする現代において、私たちの複雑な生活環境を考えるきっかけになるだろう。
モダン・タイムス・イン・パリ 1925-機械時代のアートとデザイン
会期:2023年12月16日(土)〜2024年5月19日(日)
開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
会場:ポーラ美術館 展示室1、2
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
TEL:0460-84-2111
主催:公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
後援:フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
https://www.polamuseum.or.jp
Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado
Photo: Courtesy of Pola Museum of Art, Pola Art Foundation