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大竹伸朗展

HAPPENINGText: Alma Reyes

鑑賞者が目を見張るのは、大量のスクラップブックだ。「スクラップブック」は大竹が1977年に始め、発展させてきたプロジェクトである。大竹はこれまでに71冊のスクラップブックを制作してきた。50ページのものから895ページのものまである。これらのスクラップブックは、新聞紙や雑誌の切り抜き、商品の包装、写真、複製された美術作品、映写用フィルム、切符の半券、ビニール盤レコードなどから作られている。手描きを加えたり上から塗り込めたり、さながら現代世界の地図帳である。私たちに行き渡る情報を管理する視覚言語や、そういった情報を規定する支配的な消費システムがこの作品から伝わってくる。


大竹伸朗《スクラップブック #71/宇和島》(2018〜2021年)Photo: 岡野 圭

最後のセクションで大竹は芸術を「音」と組み合わせるが、1982年に個展の開催でデビューする前から大竹はこの実践を探究していた。大竹はロンドンでサウンド・パフォーマンスに、また東京で実験的なノイズバンド「JUKE/19.」(1978〜1981年)に参加していたことがある。大竹は、『音には「記憶」や「意識」のつくり出す独特な「空間」に、人の心を素早く引き込む力があると思います。(中略)無意識の「記憶空間」とも言うべき場所に一瞬で連れ去られるような感覚を生み出す力があることに興味があります』と言う(マッシミリアーノ・ジオーニによるインタビュー「臨界量(クリティカルマス)」より)。ステージそのものを作品化したインスタレーション《ダブ平&ニューシャネル》(1999年)は本展の目玉作品だ。蠱惑的な色彩とコラージュが溢れ、ギターとドラムがマッチしている。


大竹伸朗《ダブ平&ニューシャネル》(1999年)公益財団法人 福武財団

大竹伸朗ほど勇敢で活力に溢れ、想像力に富み、型破りな衝動に駆られても平静を保てる日本人現代アーティストはいないだろう。大竹の力強い表現とインスタレーションは、過去と未来を横断する世界を開いてくれる。そしておそらく、皆が夢見たり想像したりはするが、あえて遮断しているものを明らかにしてくれるのだ。

なお本展覧会の巡回展が、2023年5月3日(水・祝)から7月2日(日)にかけて愛知県美術館にて、8月5日(土)から9月18日(月・祝)[仮] にかけて富山県美術館にて開催される予定だ。

大竹伸朗展
会期:2022年11月1日(火)〜2023年2月5日(日)
時間:10:00~17:00(金・土曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
会場:東京国立近代美術館(MOMAT)
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
観覧料:一般 1,500円/大学生 1,000円/高校生以下及び18歳未満は無料
https://www.takeninagawa.com/ohtakeshinroten/

Text: Alma Reyes
Translation: Yu Fukai
Photos: Courtesy of The National Museum of Modern Art, Tokyo (MOMAT)

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