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リオップ

PEOPLEText: Victor Moreno

SHIFTでは、レン・ハンやアイ・ウェイウェイなど、影響力のある中国の写真家を取り上げてきました。アジアの写真家で好きな人がいたら教えてください。

はい、実はレン・ハンは私のお気に入りの写真家の一人です。他には、日本の写真家、例えば植田正治のシュルレアリスムのスタイルにいつも魅了されていました。石内都の横須賀の物語には、いつも惹きつけられます。あの時代に自分の街を何年もかけて撮影し続ける彼女の一貫性は、とても刺激的です。荒木経惟は、エロティシズムとファインアートの間で表現するのが得意な方ですが、一方で、飼い猫や亡くなった妻の写真は、とてもセンチメンタルになることもあります。森山大道にも、いつも惹きつけられます。彼はどんな街でも、イメージを作り出すことができます。また、川内倫子の作品も大好きです。彼女の写真は、小さな子供の視点から見たような感じを私は受け取っています。絵画に近いかもしれませんね。そのほか、会田誠草間彌生奈良美智などのアーティストや画家も、天才だと思います。彼らは、それぞれ異なるアプローチで創作活動を行っていますが、その手法は全て自分のアイデンティティを再確認することで生まれたものだと、今では理解しています。


「スタジオ」シリーズ(2021年)
パンデミックが始まったとき、グロドック・シリーズを一時的に中止しなければならなかった。写真は、スタジオ・シリーズから生まれた最初のイメージだ。リオップは、自分の文化やアイデンティティをファッション作品に入れ込むと言うコンセプトをさらに発展させたいと考えていた。この作品では、モデルが髪飾りを身につけている。これはスンダ族特有のジャスミンのアレンジメントで、通常、純粋さを象徴する特別な機会に身につけるものだ。リオップの母親がスンダ人女性であることから、彼は伝統的なスンダの花嫁のヘッドピースの一部を取り入れた。背景の色は、リオップがジャカルタの街で見た色を参考にしており、カラフルなフロアマットと対比させている。また、モデルにはモダンな印象を与えたいと考え、洗練された白いスーツを着させた。


「スタジオ」シリーズ(2021年)
同じシリーズで同じモデルを使った別の写真。この写真では、モデルは伝統的な竹製のあじろ箕(竹ザル)を持っている(通称:タンパ)。また、ジャスミンの髪飾りとストールを身につけている。インドネシアの伝統的な衣服では、女性はこのように伝統的な衣服にストールを合わせることが多い。

世界はますますデジタル化しており、アーティストはもちろん、コミュニケーション全般において、より多くの日常的なコンテンツやアーカイブデータを必要としています。これについては、どのようにお考えですか?

考えていることは、いくつかあります。まずは、NFT(*)を始めたいと思っています。その方法はまだよく分かっていません。数年前に気づいたのですが、コンテンツのペースは非常に速くなっています。以前は、月一で出版される雑誌でよかったのが、デジタルの世界では信じられないほどの速さでそれが行われています。最初は圧倒されました。カメリア(リオップのエージェント)と私がどれだけ協力しても、異なる背景を持つ様々な人々と協力する必要があります。私は常に様々な人とのコラボレーションにオープンです。

*NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン):暗号資産(仮想通貨)と同じく、ブロックチェーン上で発行および取引される「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」のこと。


「スタジオシリーズ」(2021年)
リオップはモデルにインドネシアの伝統的なメイクしたいと考えていた。そこで、今回はジャワの伝統的なメイクを参考にした。昔はこのように、明るい唇とチークを組み合わせたメイクをしていた。彼女が持っているのは、ピンクとグリーンが美しい「インコアナナス」という植物だ。


「スタジオシリーズ」(2021年)
“インドネシアンビューティー” といっても、インドネシアには様々な民族がいるため、見た目も様々だと言うのを知らない人が多い。このポートレートでは、モデルは非常に洗練されたモダンなスーツを着ながら、南国の花を持っている。

現在、作成中のものについて教えてください。

今は、スタジオ・シリーズに取り組んでいます。これは、私にとってファッション写真をどのようにして自分の文化と結びつけるかという、グロドック作品の次のステップです。グロドック・シリーズの後、バティックを生産しているインドネシアのファッションブランドにも興味を持ちました。その中には、BINハウススッカ・チッタなどがあります。現在、BINハウスとはオンラインでのプレゼンスを高めるために仕事していますし、スッカ・チッタとは展示会を企画しています。また、課題を抱えたジャカルタの一部にスポットを当てたフォトエッセイも制作中です。さらに、アート・レジデンシーの準備もしていますし、来年にはグロドックに関する展示会を開催するために打ち合わせ中です。

コロナ時代において、ジャカルタの現状、厳しい規制について、どのように感じていますか?徐々に物事が変わりつつつあり、そろそろ海外での展示が可能になると思いますか?

正直に言うと、ジャカルタには厳しい規制はありません。政府は、解決策を出すというよりも、いつも市民を混乱させています。最近では、予約制で入場制限をして、オフラインでの展示をする人も見かけるようになりました。それ以外は、ショッピングモール、レストラン、映画館、ジムなど、ほとんど全てが通常通りに営業しています。みんな「コロナ疲れ」を感じているのではないでしょうか。より多くの人がワクチンを受ければ、良くなると思います。私はアンノウン・アジア(・デジタル)(*)の一員であることは嬉しいですが、やはり実際に見に行く展示には敵わないと思います。

*昨年アンノウン・アジアに参加したリオップだが、コロナの影響で実会場でのイベントが中止となり、オンラインでの出品となった。

UNKNOWN ASIA 2021
会期:2021年10月16日(土)~17日(日)10:00~20:00(17日は17:00まで)
   ※10月15日(金)は関係者およびVIP対象
オンライン:2021年10月9日(土)、10日(日)ともに 11:00〜20:00
出展者募集期間:2021年5月28日(金)〜7月2日(金)※予定
会場:グランフロント大阪 ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンター
住所:大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪 北館 B2F
主催:UNKNOWN ASIA 実行委員会
https://unknownasia.net

Text: Victor Moreno
Translation: Ayumi Sugawara

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