KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2019
HAPPENINGText: Amelia Ijiri
京都市立芸術大学ギャラリーでは岡原功祐とパオロ・ペレグリンが展示を行った。ペレグリンが写した南極大陸の航空写真はテキスタイルのようにも見え、荒涼とした白はほぼモノクロの世界である。
Paolo Pellegrin at the Kyoto City University Arts Gallery. Photo: Takeshi Asano, Courtesy of KYOTOGRAPHIE
岡原功祐は人間の影の側面を探求し、「Ibasyo」で自傷する少女たちを痛ましく記録した。岡原は自分たちの写真表現が、いじめ、性的虐待、家庭内暴力などの社会悪の被害者が自己肯定感を回復させるきっかけになることを祈っている。
Weronika Gęsicka “What a wonderful world” at Shimadai Gallery. Photo: Takeshi Asano, Courtesy of KYOTOGRAPHIE
嶋臺ギャラリーはヴェロニカ・ゲンシツカの「What a Wonderful World」を展示するために、ヴィンテージ家具とともに1950〜60年代のアメリカンハウスに造りかえられた。おとぎ話のごとく “happily-ever-after(末長く幸せに)” な雰囲気は、彼女のモンタージュ作品シリーズ「Traces」によって遮られる。ユーモラスでありながら人の心をかき乱す社会風刺的な要素は、本シリーズ中の「Untitled #52」で、仕事帰りの父親と駆け寄る子どもたちの間に道路がぽっかりとあいた図からも見て取れる。「Untitled #32」でも一見完璧に見える家族写真で、妻と子どもたちが額縁に囚われており、同様のテーマを扱っている。このギャラリーではダダイズムを彷彿とさせる有刺鉄線の縄跳びや鉄釘を打ったフラフープなども飾られた。
Teppei Kaneuji at Kyoto newspaper. Photo: Takeshi Asano, Courtesy of KYOTOGRAPHIE
金氏徹平はノイズ、モーション、インクを織り交ぜて用い、巨大なマルチメディアインスタレーション「S.F.(Splash Factory)」を、京都新聞ビル印刷工場跡という場所を再利用しながら披露した。
“About Her, about Me, and about Them. Cuba through the Art and Life of Three Photographers: Alberto Korda, René Peña, and Alejandro González” at Y Gion. Photo: Takeshi Asano, Courtesy of KYOTOGRAPHIE
芸者で名を馳せる祇園では、「彼女、私、そして彼らについて キューバ:3人の写真家の人生と芸術」と題し、アルベルト・コルダ、ルネ・ペーニャ、アレハンドロ・ゴンサレスによるキューバの人々のポートレートをバーとギャラリーを兼ねる Y Gion に展開した。
本年の「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」のヴァイブは古都京都に響き渡り、社会の水面下に隠されてしまいがちな人間の文化、セクシュアリティ、身体性に対する私たちの理解を広げ新たな問いを示唆した。
KYOTOGRAPHIE 2019
会期:2019年4月30日(火)〜5月12日(日)
会場:京都文化博物館別館、誉田屋源兵衛、嶋臺ギャラリー、京都新聞ビル印刷工場跡、二条城、堀川御池ギャラリー、両足院、ASPHODEL、Sfera、y gion など
主催:一般社団法人 KYOTOGRAPHIE
https://www.kyotographie.jp
Text: Amelia Ijiri
Translation: Hikaru Nakasuji
Photos: Takeshi Asano, Courtesy of KYOTOGRAPHIE