プレジデンツ・デザイン・アワード 2008
昨今、クリエイティビティを自分たちの身近な場所で発見することは既に一般的なことになっている。国内総生産の中でもクリエイティブ産業は重要な要素となり、現地のクリエイティビティを正しく評価することとそれを公にすることによって、現地だけではなく海外にも、現地の価値と優れているものを認識させることができる。
3年目を迎えたプレジデンツ・デザイン・アワードは、今年もシンガポール現地に存在するデザイン業界を十分に盛り上げた。シンガポールでは海外で評価されたデザイナーのみが成功者として見なされる傾向が強く、このアワードはそのような見解に変化をもたらし、現地で活動するデザイナーをより広く認識させ活気付けるために設けられたものである。
Edmund Wee – Epigram © MICA
プレジデンツ・デザイン・アワードはシンガポールのデザイン業界において、大きな業績と認められるマイルストーンの一つとして認知されている。評価される分野は、プロダクトデザイン、建築、都市デザイン、インテリアデザイン、視覚コミュニケーションデザインやファッションデザインなど幅広い。
例年と同様、複数の分野で多くの受賞があった。特筆すべきはデザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞した3人のデザイナーだ。3人は我々の知覚、生活、仕事、遊びなどの方法を変えてしまうような鮮烈なデザインによって、自らのデザインの地平も開拓することに成功したデザイナーだ。
『わたしのモチベーションは、見ている人の関心を引き、実際に手で触れさせるために、モノをより美しく、より良くしたいという欲望です。あなたの言葉を歌わせ、写真を輝かせるのです。』
エピグラムの創立者はベッドルームの片隅でデザインエージェンシーを始めた。彼の人生は冒険者の人生のようでもある。心理学者からジャーナリスト、そしてデザイナーへの転身を経験したエドモンドの手にかかると、平凡なリポートもブランディング装置に変化させ、ブランドをパーソナルでウィットにインタラクティブに変えてしまう。
Wong Mun Summ and Richard Hassell – WOHA Architects © MICA
『素晴らしい建築を取り壊さない限り、シンガポールも100年、200年後には現在パリやニューヨークが語られているのと同じ様に、語られることになっているだろう。』
日常経験の中に楽しみの要素を取り入れることによって、「WOHA」は現地の建築の代名詞となった。WOHAは1994年に2人の代表建築士により立ち上げられた。素材との対話、空間の会話によって都市に多様な経験を生むことに貢献し、公共空間とプライベート空間の両方で美しい作品を作り続けている。WOHAは今回の栄誉に満足はせず、これからも作品の中で新しい経験を探求し、絶えずその技術にさらに磨きをかける。
『全ての場所が機会と弱点を孕んでいる。我々はその機会を利用し、場所の弱点を解決するために努力しなければならない。現地の歴史知識や、伝統、文化や生活様式などを利用し、他の地域で再現が不可能な唯一無二の建築を作らなければならないのだ。』
Nathan Yong – Air Division Pte Ltd © MICA
『私は先ず、デザインの法則にそって重大な要素に着目しデザインを考えます。そして、結果が十分な説明を受けた選択の蒸留によって融合された知識に変化するまで重大な要素を並び替えます。』
ネイサンは “フィリップ・スタルクと同じくらい有名になる” という目標とともにキャリアをスタートし、1999年に自身のブランド、AIRディビジョンを設立した。ネイサンの成功は独力によるもので、彼は現地のデザインシーンがまだ幼少期だったころすでに、海外のデザイナーとコラボレーションを行い、製品開発、生産、物質性、小売りのコンセプトを次のレベルへと持ち上げたのである。
『デザインは演技のようだ。技術を完璧にさせるためには多くの練習と間違いを必要とする。』
2008 President’s Design Award Exhibition
会期:2009年2月28日(土)まで
時間:9:00〜19:00(土曜日17:00まで)
閉館日:日・祝祭日
会場:URAセンター
住所:45 Maxwell Road, Singapore 069118
https://www.designsingapore.org
Text: Fann ZJ
Translation: Masanori Sugiura