アイ・ウェイウェイ展「エビデンス」

HAPPENINGText: Kiyohide Hayashi

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Stools (Hocker), 2014, 6000 hölzerne Hocker aus der Qing Dynastie (1644-1911), unterschiedliche Größen, © Ai Weiwei

マーティン・グロピウス・バウの建物の吹き抜けに設置された作品「スツール」からも同様の印象を受けるだろう。天窓から陽光が差し込む美しい吹抜けには無数のシンプルな椅子が置かれている。吹き抜けに所狭しと置かれた椅子の数は6000脚。それらはいずれも丸い座面を持ち、3本の脚が伸びている。これらはほとんど同じもののように見えるだろう。だが実際には明時代から清時代までのものが集められており、見かけとは異なり古いものもあれば新しいものもある。外見とは異なり個々の椅子はそれぞれの歴史を持つ。このような作品は、ものの見方について気付かせる。外見や一面的な情報では物事を判断することができないことを。

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Stools (Hocker), 2014, 6000 hölzerne Hocker aus der Qing Dynastie (1644-1911), unterschiedliche Größen, © Ai Weiwei

こうした物事への見方を考える上で忘れてはいけない作品がある。それを感じさせるのは写真作品「スタディ・オブ・パースペクティブ」。写真に写されたのは世界の象徴的な建物や場所と、それに向けて立てられた中指。中指を立てるのは挑発の意味を持つが、それを国や文化のシンボルに対して行なうのは支配への抵抗と言える。だが対象となるのはドイツの国会議事堂や日本の靖国神社などであり、中国政府ではない。これらは国や文化の中で力が集まる場所なのだ。彼がこの作品で見せているのは、中国政府がそうであるように、それらが果たして常に正しいのだろうかという疑い。つまり、一つの国や文化で支配的なものに対して疑いの目を向けるのだ。

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Ai Weiwei zeichnend beim Alten Sommerpalast (Yuan Ming Yuan), Beijing, 1977, © Ai Weiwei

先に説明したように中国政府とアイ・ウェイウェイという構図が展覧会を取り巻く。現在の国際政治の状況では中国に注目が集まっており、彼の展示はこうした国際情勢と共に取り上げられる。そればかりか表現の自由を抑圧する中国政府と戦うアーティストという枠組が好まれ、展示を紹介する常套句にさえなっている。今やその構図はメディアや展覧会では支配的な論調となり、鑑賞者に強いられてしまっているのだ。だがアイ・ウェイウェイは一面的となった切り口を望んでいるだろうか。そして人々が支配的となった情報をただ鵜呑みにすることを望んでいるだろうか。いやそうではないはずだ。彼の作品と向き合う際に必要なのは、彼が何と闘っているのかを理解することである。展示を見る上で、それを絶対に忘れてはならない。

Ai Weiwei “Evidence”
会期:2014年4月3日(木)~7月7日(月)
時間:10:00~20:00
会場:Martin Gropius Bau
住所:Niederkirchnerstraße 7, 10963 Berlin
TEL:+49 (0)30 254 860
https://www.berlinerfestspiele.de

Text: Kiyohide Hayashi
Photos: Courtesy of the artist © Ai Weiwei © Mathias Völzke

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