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フンボルト・ラブ・ダーレム「玉座のゲーム」展

HAPPENINGText: Kiyohide Hayashi

今現在のベルリンを象徴する場所を挙げるならば、ベルリン王宮以上に相応しいものはないだろう。王宮はベルリンで起きた様々な出来事に立ち会い、時代の荒波に翻弄され失われてしまった。現在その再建が進められ、再び歴史の表舞台に立とうとしている。

再建されるのは創建当時の場所であるベルリンの中心部。今後は周りにあるベルリン大聖堂や博物館島など共にベルリンの顔としての役割を果たしていく。このように重要な意味を持つベルリン王宮だが、美術の世界と密接な繋がりを持っている。なぜなら再建された王宮の中に「フンボルト・フォーラム」と呼ばれる美術施設が入る予定となっているためだ。

フンボルト・ラブ・ダーレム「玉座のゲーム」
Berliner Schloss, Schlossforum; Rendering: Stiftung Berliner Schloss – Humboldtforum, Franco Stella

ベルリン王宮はドイツの歴史とも言える建物。それはドイツ皇帝の宮殿でありドイツの中心地だった。第二次世界大戦中には他のドイツの大都市と同様にベルリンは焦土と化し、爆撃により王宮は大きな被害を受けた。戦後にはイデオロギーの戦争に巻き込まれ、東ドイツ領に位置していた王宮は、過去との繋がりを嫌う東ドイツ政府によって破壊されてしまう。跡地に建てられたのは東ドイツの象徴となる共和国宮殿。だがもはやその宮殿も存在しない。ドイツ再統一のあとに利用されることなく撤去されてしまったのだ。残されたのは空き地となった歴史的な場所。このような歴史が積み重なる場所に王宮は再び登場しようとしている。

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View from the Altes Museum to the Stadtschloss through Lustgarten, 1890; Photo: bpk / Leopold Ahrendts

歴史的な建物の再建と言えば過去への郷愁と思われがちだが、王宮に入る「フンボルト・フォーラム」は別の意味を持つ。ベルリンで活動を行う様々な組織によって構成されるためだ。民族博物館、アジア美術館、フンボルト大学、ベルリン中央図書館が共同で王宮にできる空間を活用していく。つまり、世界の文化を紹介する場、アジアの美術と文化を紹介する場、教育と研究の場、知の保管庫が集まり、世界の文化を多様な視点で紹介する。そのため王宮の再建は多くの価値観があふれる現在の世界を映し出す。また同時に多くの外国人が住み、様々な文化が交錯するベルリンの姿を反映することにもなる。ベルリンの中心で現在のベルリンを反映するのが「フンボルト・フォーラム」なのだ。

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Kirstine Roepstorff “Daughters of the Immortal Mother” 2013, Mixed media installation, Humboldt Lab Dahlem, Probebühne 2, Project “Spiel der Throne” © Staatliche Museen zu Berlin, Photo: Jens Ziehe, Courtesy Studio Roepstorff, Berlin

こうした「フンボルト・フォーラム」の動きは既に目に見えるものとなっている。民族博物館とアジア美術館が共同で建物を構えるベルリン郊外のダーレム、そこでは「フンボルト・ラブ・ダーレム」と呼ばれる準備の動きが始まっている。王宮が完成するまでの間、ここダーレムの建物を実験の場として展示やイベントを行っていく。企画は既に2013年春より始められ、アーティスト、デザイナー、建築家、キュレーター、研究者といった専門家が集まっている。現在ここで開催されているのは「玉座のゲーム」という展覧会。アジア美術館で展示されている中国の玉座をテーマに、同国の文化を取り扱う。

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