フンボルト・ラブ・ダーレム「玉座のゲーム」展

HAPPENINGText: Kiyohide Hayashi

一つの文明を内外から見ることによって生み出される様々な視点。そこで見えてくるのは今まで気付くことの無かった別の可能性でもある。特にアーティスト、サイモン・スターリングの作品は、多様な視点が生み出す可能性を気付かせていた。彼が見せたのは玉座の細部を映し出す映像作品。調査のごとく細部を映し出す映像は肉眼で捉えられない玉座の細やかな表情を見せる。

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Simon Starling “Screen Screen” 2013, Mixed media installation, Humboldt Lab Dahlem, Probebühne 2, Project “Spiel der Throne” © Staatliche Museen zu Berlin, Photo: Jens Ziehe, Courtesy Simon Starling; eugerriemschneider, Berlin

表面は異国情緒を感じさせる物語や風景の一場面が描かれているが、映像では螺鈿細工の美しい幾何学模様が登場している。見えてくるのは時代を感じさせない美しいデザイン。アーティストは玉座が持つ可能性をその表面に惑わされることなく探し出し、従来とは異なる観点によって目に見えるものとする。異文化という見知らぬものを身近とするうえで何が必要なのかを気付かせ、「フンボルト・フォーラム」に相応しい作品となっていた。

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Project “Wissen erzählen”, Humboldt Lab Dahlem, Probebühne 2 © Filmgestalten

異文化の紹介、異文化の批評、その文化内からの視点、可能性を見出す冷静な観察といった形で「フンボルト・フォーラム」の考えは他文化への扉となり、今後王宮で行われるプロジェクトの姿を予感させる。もちろんその扉の先は中国だけでなく、北アメリカやインドといったように他の地域も対象となっており、今後は更に別の地域や文化が紹介されることになるだろう。そう、再建される王宮は世界の文化を知り、体験できる場となるのだ。

王宮が再建されるベルリンの街だが、そこには様々な人が住む。かつて壁によって街が東西に隔たれていた頃、東ドイツ側には同じ社会主義国のベトナムから多くの人が移り住んだ。また西ドイツには労働力を求められて多くのトルコ人がドイツへと渡っている。そして現在ではEUという新しい国家の集合体が、無数の外国人をその中心都市ベルリンへと惹き付けている。ベルリンは多国籍な人々によって多様性あふれる街となっているのだ。

こうした常日頃から生じる様々な文化の混在は、ベルリンの未来を語る上で避けることができないテーマである。いかに異文化を理解するか、この街に溢れる多様性を受け入れるか、それは王宮の再建という国家的なプロジェクトに関わっているように、ベルリン、そしてドイツが向き合わなくては行けない現実なのだ。

Humboldt Lab Dahlem “Spiel der Throne”
会期:2013年6月18日(火)〜10月27日(日)
時間:10:00〜18:00 (土・日曜日11:00から、月曜日定休)
会場:Museen Dahlem
住所:Lansstraße 8, 14195 Berlin
入場料:8ユーロ
https://www.humboldt-forum.de

Text: Kiyohide Hayashi
Photos: Leopold Ahrendts, Jens Ziehe, © Staatliche Museen zu Berlin © Filmgestalten

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