クリスチャン・ボルタンスキー「移民」展
20世紀前半に建てられたオテル・デ・イミグランテスは、当時ブエノスアイレスに到着したばかりの移民たちを5日間だけ受け入れる場所だった。ブエノスアイレスのラプラタ川沿い、現在は移民局の裏に置き去りにされたように、しかし独特の存在感を持って佇んでいる。
当時、何千もの移民が、そこで文書登録され、寝泊りし、メディカルチェックを受け、仕事探しに明け暮れた。建物を半分に割るように横断する長い廊下は、各種手続きに追われる多くの移民たちの列で埋め尽くされていた。
その建物の3階で現在、クリスチャン・ボルタンスキーのインスタレーション「ミグランテス」(移民) が公開されている。ブエノスアイレスのトレス・デ・フェブレロ大学により全4ヶ所で開催されている「プロジェクト・ボルタンスキー」の中のメインスポットだ。
この移民滞在館のために構想されたインスタレーション。ほぼ廃墟化したこの場所で、ボルタンスキーは床に放られたままのほこりまみれの文書に出会う。移民達のアイデンティティーが記された紙の死体。新しい土地で新たな人生を始めようと夢を持って訪れた移民達の未来と、離別を強いられた彼らの過去が共存するこの場所で、アートによって移民の亡霊を蘇らせた。
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