クロスカウンター・日英アーティスト共有展

HAPPENINGText: Yuko Miyakoshi

赤、緑、黄、水色のポスターを並べたような作品は、ルース・イーワン氏の「Unrecorded Future Tell Us What Broods There」。作品中に使用されている“ちょっとづつ世界を良くする”スローガンは、20世紀初頭の反優生学運動活動家の本から引用されたもの。

02.jpg
ルース・イーワン「Unrecorded Future Tell Us What Broods There」

固いロゴを用いてどこか冷めたスタンスで提示されているが、「FRAIL AND YOUTHFUL AS WE ARE WE COULD BE LIKE YONDER STAR(若くてうぶな私たちでもあの星のようになれるだろう)」、「WITH THE FRAGRANCE OF OUR DEEDS SATISFYING HUMAN NEEDS(実りある行いの香りは私たちの希求を満たす)」など、そのどれもがポジティブなメッセージ。今の日本とイギリスの状況に捧げる言葉のように響いてくる。

06_tiff.jpg
青山悟「祈りは通りすぎる」

このほか、黒い刺繍糸で描いたマリア像で通奏低音のように場を引き締めていた青山悟氏の作品「祈りは通りすぎる」や、一瞬が永遠に感じられるような独特の描写で日常を見せる浅海陽子氏の写真「素敵な歌と船はゆく、横浜」など、全体としてポップさがありつつも、少し重みのある印象を残す空間になっていた。

NINGYO_GEKI.JPG
松原壮志朗氏による人形劇 Photo: Yuko Miyakoshi
シンプルな場面設定ながら、すっかりその世界に引き込まれた会場の人びと

エックスワイジー・コレクティブを見終わったら、5分ほどバスに乗り次の会場カプセルへ。オープニング・レセプションはアーティストのパフォーマンスが開催されるとあって大賑わい。かくして始まった松原壮志朗氏の人形劇は、紙芝居にわくわくした子供の頃を思い出させながらも、ちょっとブラックでもの哀しい大人のための寓話のようでおもしろかった。山川冬樹氏のパフォーマンスはギターやシンバル、山川氏の心臓音や肉声によるホーメイが多用され、生理的に震わされる表現だった。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE