堂島リバービエンナーレ 2011
HAPPENINGText: Chiaki Ogura
今回の目玉作品である「ホワイトホール」(森万理子・隅研吾)が展示されている気圏は、天地創造と精神の象徴であり、大気・宇宙を作品化している。アインシュタイン方程式による、ブラックホールにより崩壊した星を再生させる「ホワイトホール」をに注目し、環境問題と対応させることに成功している。洞窟のような建造物の素材は、99%空気を含ませた、限りなく非物質に近い素材でできている。また、2001年度ターナー賞を受賞したマーティン・クリードの作品「The lights going on and off」もこの圏で見られる。広々とした空間にただ点いたり、消えたりする照明。シンプルなこの作品は、全ての物体・生命の生と死をも連想させる。
森万里子+隈研吾「ホワイトホール」
音響は坂本龍一が担当。かすかに流れるピアノのメロディに、遠くの方から少しずつ不安を誘う音が混ざってくる。その音が次第に大きくなり、ピアノのか弱い旋律が聞こえなくなる。一歩一歩あゆみ寄ってくるひずみの音。まさに現実に侵食する悪夢を表現していた。
日本独特の根拠のない安全神話。デジタル化による視覚異常に慣れてしまった私たちが、現実に非現実が存在することに対する感覚の麻痺。情報を正確に伝えるツールである言葉が、イメージ優先の単語の連続により、意味をきちんと伝える力をなくしている現実。
アニッシュ・カプーアの作品マケット(模型)が並ぶ
特に現代アートの巨匠アニッシュ・カプーアによる作品が、目をひいた。彼の建築マケットには、自然には存在するはずのない築物を、何の疑問もなく観光している人間の図が空虚感と共に作り出されていた。
「地球からの危険信号に気づいていますか。」
今年3月11日の大震災によって、その危険信号をより身近に感じたはずである。私たちはもっと地球規模で環境問題を考えていかなければならないと考えされられた。3月11日以降、大きく変わったものがある。元には戻れない、麻痺している場合ではないのだ。そのことを強く訴えられた気がした展示会であった。
日本にとって大きな節目となった2011年。日本人はもとより自然との対峙ではなく、共生を目指していたとコンセプトにもあるが、現在の日本はどうだろうか。もう一度、地球と私たち自身に目を向けるためにも堂島リバービエンナーレ2011に足を運んでみてはいかがだろうか。8月21日(日)まで開催中。
堂島リバービエンナーレ 2011
会期:2011年7月23日(日)〜8月21日(日)
会場:堂島リバーフォーラム
住所:大阪市福島区福島1-1-17
TEL:06-6341-0115
https://www.dojimariver.com
Text: Chiaki Ogura
Photos: K. Nagasawa