オープン・ハウス 2011
オープン・ハウス2009の掟。その1.5軒の家に行ってアートを飾ること。その2.近所の人に紹介すること。その3.近所の人以外にも紹介すること。その4.ビールの準備をしておくこと。
そして、オープン・ハウス 2011の掟。その0.中心地に足を踏み入れること。それから2009の掟に従うこと。
去年、ショップハウス(1階が店舗になっている住宅)が中心地へと進出していったのを機に、アートが人々にとって身近なものになってきているのは、自然な流れのように思える。今のところ、シンガポール人の85パーセントは公営住宅に住んでいて、その多くは、ありふれた外観でありふれた場所にある。
しかし、マリーン・パレードは、そんな典型的な住宅街ではない。シンガポールの東海岸に位置していて、目の前には海とイーストコーストパークが広がる。他の物件にはない景色を見られるのだ。58棟の住宅が埋立地に建てられていて、かつての海岸線は排水管が通された防波堤になっている。(その点はよく話題になる。)
オープン・ハウスに行くと、展示物となったマリーン・パレードの5棟の住宅を見て回ることができる。結局ここは、全く別モノの公営住宅なのだ。来場者は、まるで航海するように展示を楽しむだけでなく、その場所をより魅力的な空間にする者となり、展示されているアートを他者へ知らせる者となる、そういった意味ではアーティストでもあるのだ。
ヤング・アーティスト・アワード(ナショナル・アーツ・カウンシル)の受賞者であるマイケル・リーは、この家の住人のために「偽りの賛辞」をテーマに制作した。額縁に入って平然と壁にかけられているその作品は、注意深く見ていなければ気付かずに通り過ぎてしまうだろう。家具などと一緒に展示されており、モノや自由に対する、住人の想いの一端を知ることができる。途中でもしもこの家の住人に出会えたら、あなたはきっとマイケルの表現力に納得し、偽りの未来が広がっていることに疑問を抱くだろう。
同じくヤング・アーティスト・アワードの受賞者であるチャオ・レンホイは、カトン・コーストのイルカの姿を捉えた写真で同じテーマを表現している。箱に入ったイルカの骨が、その写真を際立たせる。かつては確かに、生物を形作っていたものである。このような作品で、虚構と現実について疑問をなげかけている。人間が作り出した環境の中で、ある人は自然がどこにでもあることを忘れ、都市空間を抑制する方法を見つけ出す。外の海をじっと眺めていれば、もしかしたら偶然イルカを見つけられるかもしれない。
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