白井剛

PEOPLEText: Fumi Hirota

撮影し、ご自身で編集作業に取り組んでみて、いかがでしたか?

映像となる画を想像して、それをカメラの前で踊ってみるというのは、やはり身体が追いつけないですね。踊ると疲れるし、ある意味、満足する。それでいい場合もあるけど、しばらくたって映像を見ると、「こうしておけばよかった」というのは多くあります。カメラアングルや照明とか、色々と気付く点が出てくるのです。撮影現場でのコミュニケーションについても、初めてのことが多かったです。どういう指示を出せば何が伝わるとか、どこまで指示するべきなのか、どうやったら共有できるのかとか。舞台作品の制作現場で人と関わることには慣れてきてはいるのですが、撮影の現場では、感覚として慣れていないことが多くありました。
編集作業では、ダンスの「間(ま)」がとにかく気になりました。今回の作品では、モノがあるから、それとの関わりのなかで、踊りのリズムは少しは成立しています。でも映像で見ると、何に向けて踊りがあるのかわからない瞬間とか、「間」が短かったり、長過ぎる部分もあります。お客さんがいたら違いますよね。そういった部分をカットしたり、スピードを調整したりしていくうちに、もう一度振り付け直しているような、そんな印象があります。そういった作業は、舞台で、ダンサーに振付けをしているような感覚に似ていますね。

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「質量, slide ,& . in frames」(2011、YCAM委嘱作品)

昨年8月にはYCAMのワークショップ「surround garden」にて「音と身体」の関係性について追求するワークショップの講師も務められています。今後取り組んでみたい活動、テーマなどありますか?

ワークショップの講師は、つくることとか、踊ることとは違う、アイディア、労力、勇気が必要です。ワークショップ専門の振付家がいても良いくらい…。200人の観客を前に踊るのと、10人のワークショップ参加者と顔を付き合わせてやるのに、どっちが負荷があるかというと、比べられない。ワークショップに「発表」などを求められると、プログラムの組み方も変わってきます。常にワークショップは、僕にとっても勉強にもなるし、楽しい現場ですね。
今回の映像作品は、今後もインスタレーションへの展開などもありえるのかな、と考えています。まだまだ具体的ではありませんが、美術とダンスとの関わりにもっと意識的になることで、振付やダンスによる映像作品へのアプローチが、さらに広がるよう活動をしていきたいと思っています。また、今回の作品制作で、カメラへの興味も深まりましたね。とくにダンスにとっては、映像よりも写真のほうが、身体的なリアリティが伝わりやすい部分もあると思います。そういった点を踏まえながら、インスタレーション、映像、写真などと、ダンスとの関わりを今後も探っていければ、と思っています。

白井 剛 × YCAM ビデオダンス制作プロジェクト
「Choreography filmed: 5days of movement」新作映像発表会

日時:2011年1月23日(日)14:00 開演
会場:山口情報芸術センター
住所:山口県山口市中園町7-7
TEL:083-901-2222
https://c-filmed.ycam.jp

Text: Fumi Hirota

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