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「現代エネルギー — イタリアの姿勢」展

HAPPENINGText: Chelsea Young

展示の第2セクションは映像作品が中心になっている。第2セクションに足を踏み入れるや水滴の落ちる心地よい音が耳に入ってくる。アンドレア・アクィランティのオーディオ・ヴィジュアル・インスタレーションだ。アンドレアの作品は第二回テルナ賞の二等賞も受賞している。

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アンドレア・アクィランティ、「水」、二等賞、オーディオ・ヴィジュアル・インスタレーション、ローマのアパルトギャラリー提供

アンドレアの作品は水漏れをしている屋根を屋内に再現する。水は地面ではなく床の上に立つ9つの容器の中に落ちる。落ちる水滴は今にも溢れそうな水面に波紋をつくりだす。部屋の半分に照明があたり、残りの半分は暗闇だ。つまり容器の置かれている場所だけが一筋の光で照らされている。光源と容器の間に人が入れば容器は色を失う。まるで時と共に色が薄れるかのように。アンドレアの作品は様々な階層で解釈することができる。その中のひとつに、水を集めるなどのシンプルな手段を使って天然資源の再利用をしてほしいという、人々への訴えがある。

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フィリッポ・チェンテナリ、「物の語る場所」、2009、ヴィジュアル・インスタレーション、作品サイズ可変

もうひとつのコーナーでは、衣類、ぼろ切れ、そしてベッド・シーツなど、日常生活の中にありふれた物が高くつり下げられている。アーティストのフィリッポ・チェンテナリは壮大な建築物など都市の不変な物事のイメージを撮影し、ベッド・シーツなどの常に変わり続ける、不安定な日常生活用品の上に映し出した。永遠と衰退は向かい合わせだ。フィリッポのデザインを通して、世界はより人間らしさを増し、その美は家庭の中に表現される。

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フランチェスコ・ジョディチェ、「水の物語」、2008、映像、4分16秒

フィリッポの作品に加えて、もうひとつ繰り返し上映された映像作品がある。「水の物語」はカザフスタンにあるアラブ湖で撮影された短編映画であり、国連がサポートする「ストーリーズ・オン・ヒューマンライツ(人権についての物語)」映画祭に出品された。短いとはいえ非常に優れた作品であり、1950年代のソビエト政権下において、数千万の人々の生活を支えてきた巨大な塩水湖がどのようにしてほとんど干上がってしまったのか、史上最も悲劇的な人災のひとつとして数えられる出来事について詳細に物語っている。特に有意義なのは、塩水湖がある地区に留まり続けた人々の勇気と決意、そしてその人々が自らのルーツや文化の破壊を目の当たりにして、その破壊にどのように立ち向かい、喜びと悲しみの中でこの理想郷を信じ続けたかを、この短編映画がはっきりとありのままに映し出していることだ。

この「現代エネルギー」をテーマにした展示では、豊かで変化に富んだ表現や技術に触れられただけではなく、展示のテーマと、作品に対するアーティストたちのインスピレーションを通じて人類の未来と環境保護について考えさせられた。「環境保護」を様々な方法でサポートすると同時に、私たちは「低炭素な生活スタイル」についての机上の空論を安易に繰り広げるだけではなく、私たちが現在直面している資源の危機について静かに真剣に向き合う必要があるだろう。

現代エネルギー — イタリアの姿勢
会期:2010年6月3日(木)〜7月11日(日)
開館時間:9:00〜17:00(月曜日休館)
会場:上海市上海市規画展示館
住所:上海市人民大道100号
https://www.supec.org

Text: Chelsea Young
Translation: Kazuyuki Yoshimura

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