エリック・ボシック

PEOPLEText: Bonnie Oeni

一番大変だったシーンは何ですか?

おそらく感情的なシーンです。私の演じ方のアプローチは、「できる限りリアルに演じる」ということです。私は方式に従ったテクニックを用います。すなわち、基本的にまずはキャラクターの精神的成長に焦点をおき、それから自らの人生を振り返ります。そしてその中に、キャラクターに共通する経験を見つけようとするのです。もちろん、私にはまだ子供がいません。そしてこの映画で描かれているように、子供を亡くした経験もありません。だから私は自分の人生を直接キャラクターと結びつける事はできないのです。

私が行ったのは、私の人生の中で最も暗かった時期、困難だった時期を振り返ることでした。そしてそれを私の演技の感情的基礎に置いたのです。私が演じた人物の現実はバラバラに引き裂かれたものでした。息子を失い、自らの肉体を変えられ、ついには家族の歴史は全て偽りだったことに気付かされます。彼が陥ったのは暗い闇です。肉体的な痛みに耐える事の方がよほど楽なのです。最も難しかったのは、この役が、ただ入り込んですぐ抜けられる類いの役ではないという点でした。役柄から抜ける事ができないのです。こうした暗い感情を、1日の撮影時間よりもずっと長い間持ち続けるということです。それでもなお、私は行けるところまで行ってやろうと思いました。

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© TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009

塚本晋也監督との仕事は、どのようなものでしたか?

私はずっと塚本監督の大ファンであり、自然な流れとして私は彼を天才だと思いました。映画製作という点で彼の方法論を知り、単に演技だけでなく映画製作のプロセス全てを彼から学ぶためにも、彼と仕事をすることを楽しみにしていました。そして自分が監督する作品にもそれを生かしたいのです。

塚本監督は、本当の意味で自分の作品を生きる人です。過去にも私は天才と呼ばれる人々と仕事をした経験がありますが、大抵皆朝から晩まで作品の事に取り憑かれています。文字通り、自分の作品を生きているのです。塚本監督にも少しそうした点がありました。たわいもない雑談は一切ありません。昼食休憩のときには彼はいつも絵コンテを見ながら次のシーンのことを考えていました。彼はまた、まず自分で実際に演じてみながら私たちに「君はここに立って、それからこうして…」という風に指導をします。そしてカメラの動きを決めていきます。その上私が身につけるマスクや義手まで自分で彫り、照明も自分でセッティングし、作品の全てに関わるのです。この作品は、完全に彼の作品なのです。

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© TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009

「鉄男 THE BULLET MAN」は、「鉄男」シリーズの最新作です。この作品はどういった点が新しく現代に蘇ったとお考えですか?

これまでの「鉄男」作品では、鉄男が危機的な状況を経験し、彼が激しい怒りとともにそれを乗り越えるときに彼の肉体が変わるというのが基本的なプロットでした。1作目では、鉄男は「やつ」という敵対する存在と出会い、世界を破壊したいという点で両者がつながりを持ちます。2作目では、世界は破壊されてしまいますが、鉄男は再び妻と幸せに暮らします。今回の3作目では、鉄男は自分の激しい怒りと向き合い、そして乗り越えようとするのだと私は思っています。

20年の時が経っているので、作家としての変化がこの作品には表れているでしょう。塚本監督の近年の作品を見ると、より静かで、落ち着いたトーンのものになっています。だから塚本監督と最初に作品について話し合った時、私はこの作品が1作目のように華やかで派手な作品になるのか、あるいはもっと落ち着いた作品になるのかを尋ねたのです。彼はこの作品は「大人の鉄男」、より成熟した鉄男の作品になると教えてくれました。今回の作品には今までのものと比べて、より深いメッセージや哲学が含まれています。

あなた自身の今後についてはどう感じていますか?

今は、演技についてできる限り向上したいと思っています。アジアの他の国や、オーストラリア、ヨーロッパ、アメリカなどいろいろな場所で演技をしようと考えています。ヴェネチア国際映画祭やトライベッカ国際映画祭に向けて作品のプロモーションを行いました。私は、東京を拠点としながらも世界中のプロジェクトに参加していきたいと思っています。

鉄男 THE BULLET MAN
公開:2010年5月22日 シネマライズ他全国ロードショー
監督:塚本晋也
出演:エリック・ボシック、桃生亜希子ほか
プロデューサー:川原伸一、谷島正之
脚本:塚本晋也、黒木久勝
音楽:石川忠
制作プロダクション:海獣シアター
配給:アスミック・エース
2009年/日本/71分/全篇英語/日本語字幕/カラー/ヨーロピアン・ヴィスタ/ドルビーデジタル
© TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009
http://tetsuo-project.jp

Text: Bonnie Oeni
Translation: Shiori Saito

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