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ソナー 2009

HAPPENINGText: Julio Cesar Palacio

今年のフェスティバル最後の夜には、才能溢れるアーティストによる、このフェスティバルの中でも一番驚くようなラインナップが待ちうけていた。ソナーは、 アニマル・コレクティヴが参加する、スペインで唯一のイベントだ。

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Animal Collective

ニューアルバム「メリウェザー・ポスト・パビリオン」もリリースし、素晴らしいショーが期待される中、彼らのショーはスタートした。サイケデリックな雰囲気と、バンドの生みだす幻想的なサウンドは、このフェスティバルで最高のパフォーマンスのひとつだろう。

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Fever Ray

続いて、こちらも大きな期待を受けている、ザ・ナイフのカリン・ドレイヤ・アンダーソンによる新プロジェクト、 フィーバー・レイのパフォーマンスがソナーパブで行われた。イベント期間中、このショーには本当にとても期待している、という声をあちこちで耳にした。しかし最終的に、賛否両論という結果に終わった。衣装と照明によって暗闇とゴシックな雰囲気が生みだされるという、劇場的なショーであった。

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Orbital

その後、イギリスのダンスシーンを代表するデュオ、オービタルによるショーが行われた。ハートノル兄弟によるステージは、まるでティーンエイジャーのようなダンスと共に「ラッシュ 3-1」で始まった。続いて、今もなお新鮮な、彼らのダンスミュージックの様々なレパートリーによるセッションが行われた。

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Crystal Castles

ソナーパブでは最高の瞬間が起ころうとしていた。パブの中はクリスタル・キャッスルズのステージを期待する人々でいっぱいになっていた。このショーでは、もはや全てのことが起こったと言えるだろう。パワフルで、興奮し、いつもどおり爆発寸前といった様子のアリス・グラスがステージに上がる。音響危機のトラブルで、観客に何も聞こえないという中でもショーは続いた。アリスは音が切れていても、歌い、叫び続けた。観客は怒り出し、音響技士に罵声を浴びせてもなお、コンサートは続いた。これはソナーでは初めての光景だ。クリスタル・キャッスルズはこうしたトラブルを気にすることもなく、次から次へと曲を演奏した。観客ががっかりし、機嫌を損ねる中、アリスは観客の中へとダイブした。

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Crystal Castles

観客の様子を見たアリスはがっかりした様子だったが、急に再びステージに飛び乗ると、楽器を分解し始め、ドラムセットを音響技士とガードマンに投げつけた。ガードマンはこうした状況に慣れていなかったのか、ステージ上でバンドと喧嘩を始めた。そう、まさに全てが起こったのだ。この驚くべきできごとは、もしかしたら、ソナー全ての中で一番のできごとかもしれない。もちろん、何ひとつ聴くことも、観ることもできず、多くの人々はがっかりしていた。しかし、この普通からはかけ離れたできごとは、大きな議論を呼び、人々の記憶に残るだろう。クリスタル・キャッスルズは、音もパフォーマンスもなしに、驚くべきショーを成し遂げたのではないだろうか。もちろんこの結果、主催者とバンドの間には、考えに相違が生じた。しかし、こうしたできごともショーの一部であり、それが楽屋だけでなく、観客の前でも起こるというのは、素晴らしいことなのではないか。

今回のソナーは、実験音楽やルーツ音楽、パーティーステージやパンクなど、多岐に渡るジャンルを横断し、素晴らしかったと言えるだろう。ソナー主催者の心掛けによって、フェスティバルが素晴らしいものになっているのだ。しかし、このようにソナーはただの音楽イベントではない。素晴らしいハプニングが起こる新たなバビロンのような3日間なのである。

SONAR 2009
会期:2009年6月18日(木)〜20日(土)
会場:CCCB, MACBA, Centre d’art Santa Monica
住所:Montalegre 5, 08001 Barcelona
https://www.sonar.es

Text: Julio Cesar Palacio
Translation: Ayano Yamada
Photos: Julio Cesar Palacio

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