ジェームズ・パターソンとアミット・ピタルは2000年から「インサートサイレンス」をスタート。彼らは、それぞれの経歴であるイラストと音楽を組み合わせ、デジタルメディアの作品を生み出す独自のツールを作っている。技術を駆使して制作過程を自動で組みながらも、ハンドコントロールしやすいツールを心掛けている。

アミット・ピタルは、1998年にFlashで独自の楽器をプログラミングすることからスタートしている。『当時、Flashが音楽に十分でないことに気付いたんです。それでProcessing、Java、C++などの恐ろしい場所へ移行しなければならなくなった』とアミット。彼は3D環境で音楽を”描く”ツールの「ソニック・ワイヤー・スカルプター」を紹介しながら、こう打ち明けてくれた。『ある時点で開発を止めて実践することがどれだけ重要か、ということを教えてくれたジェームズに感謝です』

「ソニック・ワイヤー・スカルプター」インターフェイス

『あるギャラリーにソニック・ワイヤー・スカルプターを設置して、人がそれで何をするか見ようと思ったのだけど、皆それをうまく使うことができなくて、僕が進めていかなくてはならなかったんです。また、楽器に実体がなかったので、ボディを与えたかった』と、ピタルは昔のアーケードゲームのアタリマシーンとタブレット装置による最終結果を見せながら、締めくくった。

ジェームズ・パターソンは、ソニック・ワイヤー・スカルプターの3Dドローイングエンジンに手を付けることにとても興味があったことから、RHONDAが生まれた。このツールはとてもユニークな方法で3Dで絵を描くことができ、それを使ってジェームズは3Dで生き物を生み出した。そして、Flashでその生き物に命を吹き込み、全てを一緒に彼の独自の世界に集めた。『僕も怖い場所へ進まなくてはならなくて、僕の場合は、Action Script 3を正しくプログラムする方法を学ぶためでした』

チェーン・リアクション映像

ジェームズとピタルは、ダンサーの動きに連動した動画背景を作る時間ベースのツールを生み出した、インタラクティブ・ダンス・パフォーマンスの「チェーン・リアクション」を発表し締めくくった。

クリス・ミルクは、ニューヨーク出身の受賞歴のある映像作家兼ライターだ。彼は最近サンフランシスコに移り住み商業向けの仕事を始めた。彼の最近の仕事は、主にミュージック・クリップと商業向けの仕事を手掛けており、ケミカル・ブラザーズ、U2、バークレー、カニエ・ウエスト、オーディオスレイヴ、モデスト・マウス、ブリーダーズ等の作品がある。

スーパースターが名を連ねるリストをよそに、クリス・ミルクは公の場で話すことにとてもナーバスだという。おそらくそれが理由で、彼のプレゼンテーションは、ÉtapesやDesign FluxのCEO兼エディターを務めるミッシェル・シャノーによるインタビューが企画されたのかもしれない。

クリス・ミルクによるプレゼンテーション

『僕がやりたいことを、ミュージシャンにやらせてもらえているので、僕はラッキーだ。また、ケミカル・ブラザーズの作品が僕の最初のビデオクリップ作品としてできたこともラッキーだと思う』とミルクは言う。彼の多才なスタイルについて聞かれると、ミルクはこう言った『スタイルはストーリーから出てくるものだ』

U2の「The Saints Are Coming」というビデオクリップを見ることができた。これは、ミルクがストーリーを書き換えたいと思っているものだ。『良いことに軍隊を活用したらどうなんだろうか？アメリカは、ニューオーリンズで多くの人が亡くなっているという時に、イラク戦争に多くのお金を費やしているのです。Youtubeのコメントを読んで悲しくなりました。多くの人がビデオクリップをちゃんと理解してくれてなかったので』と、ミルクは語った。

更にミルクは続けた。『ミュージックビデオの映像作家は、作曲家とは正反対なもの。歌にあるアップダウンなどの抑揚に引かれ、その歌に沿ったビジュアルをベストを尽くして表現したいと思っています』

『支払いをするためにコマーシャルな仕事をやっています。でも、数多くの人へと広がる仕事の中でメッセージを残さないというのはもったいない』ミルクが発する言葉は彼の人柄から自然と溢れ出るマニフェストだ。

プレゼンテーションの最後は、その全てがCanon 5D Mark II SLRで撮影された、美しい短編映像「ラスト・ドリーム」で締めくくった。

クリス・ミルクのプレゼンテーションは、これまでのフェスティバルで最高のひとつであり、彼の言葉はクリアで簡潔、そしてとても刺激的なものだった。