黒田晃弘展「似顔絵で人の世界を旅する」
似顔絵を描くために北海道を旅した。旅をして人と知りあい、似顔絵を描かせてもらう。そして、別の人を紹介してもらう。紹介してもらえるのは、自分の似顔絵で喜んでくれたからだと感じる。そして、また似顔絵を書く。似顔絵を描く炭も自分で作る。100円ショップで売っている材料でもできるそうだ。
描く時は最初から目鼻の位置を決めたりはしない。まず相手と会話をしながら考えていく。話題は相手の好きそうなことを話していくそうだ。相手と話をしながら同時に自分の心とも会話を試みる。相手と自分との2つの会話によって、混沌した抽象的な頭の中のイメージから、炭を握る手で必要な線を探していく。似顔絵は紙と木炭を使うライブな世界。似顔絵によって様々なつながりができていってコミニュケーションが広がっていく。似顔絵はアートを通じでできるコミニュケーションなのである。
利尻では漁師小屋で展示会を行った。そこに飾った作品は利尻に住む60人の似顔絵。それは、この地の人口の1パーセントとなる。その地に住む人がその地に住む人の似顔絵を見る。知っている人の似顔絵を見ることによって、見る側に主体性が生まれる。それによって、ごく普通の人にアートについて強く興味を持ってもらえる。
2005年には、国内有数の国際美術展「横浜トリエンナーレ2005」に招聘され、大きな注目を浴びた。いくつかのTV番組でも紹介される。その翌年バングラデシュに渡り、そこで生活する人々をモデルにした展覧会を開催。東京、北海道の美術展にも招聘された。小学校での似顔絵ワークショップ、病院で患者に「似顔絵描き」によるアートセラピー、視覚障害をもつ方のための「手で触る似顔絵」など多様な活動へと発展している。
今回の展示では、今までの似顔絵を展示。また、会期中に注文に応じて似顔絵の制作も行った。展示を見ると作品ごとにタッチが違うので驚く。まさに十人十色ということだし、よりアートに昇華した似顔絵とはそういうものかもしれない。墨一色に描かれた作品は、見る側とっては非常に饒舌に語りかけるものだった。
黒田晃弘個展「似顔絵で人の世界を旅する」
会期:2008年7月12日(土)〜17日(木)
時間:13:00〜23:00
会場:CAI 02
住所:札幌市中央区大通西5丁目昭和ビル地下2階
https://www.cai-net.jp
Text: Shinichi Ishikawa
Photos: Shinichi Ishikawa
