黒田晃弘展「似顔絵で人の世界を旅する」

HAPPENINGText: Shinichi Ishikawa

自分のものなのに、他人のほうが見る機会の多い「顔」。良くも悪くも自分の「顔」に関心のない人はいないと思う。それが全てを表す訳ではないが、時には全てだと思うこともあるし、実際あるかもしれない。誰もが例外なく一生付き合っていくのが「顔」なのである。

黒田晃弘展

今回紹介する、黒田晃弘は北海道出身の美術家。もともと平面作品を描く美術家であったが、多彩なアート活動を経て画家の原点というものを考えた結果、2003年より「似顔絵アーティスト」としての活動を開始した。その理由、似顔絵は100パーセントみんな知っているから、という素朴なもの。そのわかりやすさとシンプルさに惹かれたようである。

黒田晃弘展

「似顔絵」という表現を選んだ理由をもう少し深く聞いてみると、今の社会は何でもカテゴライズがされていて、僕達はそれがないと生きていけないようになっている。そんな世界でもジャンルを問わないアートとして似顔絵を選んだという。似顔絵は画家として真剣勝負であり、似顔絵ができあがって「これは私だ」といわれなければダメだと語る。

黒田晃弘展

さらに、黒田はアートの世界は大きくふたつに分かれていると考える。ひとつは上流な生活をしている人のためのものと、もうひとつはカウンターカルチャー(対抗文化)としてものである。そのふたつを眺めながら黒田はそのどちらにも行かないことに決めた。自分は社会で普通に生活にしている人のためにアート描きたい。そう考えた時に自分のアートは似顔絵となった。似顔絵を描くことを通して人間の世界を描いていきたい。それらを集めて人間マンダラのようなものを表現できればと思っている。

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