「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み」展
HAPPENINGText: Shiori Saito
2000年代最初の受賞者は、日本でも人気の高い写真家、ヴォルフガング・ティルマンス。壁に写真をテープで止めるだけという展示の方法は、一枚一枚の写真を内包した空間そのものをひとつの作品に変え、見るものそれぞれの記憶と感覚にパーソナルに訴えかけてくる。巨大プリント《君を忘れたくない》(2000年)を中心に、数々の写真のほか、写真集や雑誌作品を見ることができる。
ヴォルフガング・ティルマンス《君を忘れたくない》2000年. Courtesy of The artst and Maureen Paley, London
部屋の照明が5分おきに点いたり消えたりする様を美術作品として打ち出したマーティン・クリードの《ライトが点いたり消えたり》(2000年)をはじめ、21世紀を迎え増々多岐を極めてゆくアーティスト達の作品を巡りながら観覧を終えた後は、ターナー賞の歴史を辿ったビデオの上映でこの賞の持つ華やかな側面を知ることができる。
常に新しい美術を発掘し、世界に発信してきたターナー賞。日本での初の試みとなるこの回顧展は、様々な形を持って現れる「美術」というものを幅広く認め入れる英国の器の大きさに驚かされながら、国内ではなかなか見ることのできない20余年の美術史の最先端を直に楽しむことができる貴重なイベントである。
「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み」展
会期:2008年4月25日(金)~7月13日(日)
時間:10:00~22:00(火曜日17:00まで)
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53F
TEL:03-6406-6652
主催:森美術館、テート・ブリテン、ブリティッシュ・カウンシル、朝日新聞社
https://www.mori.art.museum
Text: Shiori Saito
Photos: Courtesy of Mori Art Museum © the artists
