マーク・ジェンキンス&木之村美穂「光沢ある一瞬のパラダイス」展
HAPPENINGText: Wakana Kawahito
ゴミ袋に足がついている作品がありましたが、なぜ、生きたモデルを作品の一部として使ったのですか?
ゴミ袋に足がついている状態は可笑しくて面白い。というのも、人間と我々が出しているゴミとが一体化しているからです。多くの人は自分が出すゴミより も自己の所有物から自分自身を識別します。まさかゴミと一緒に住んでいるなどと考える人はいないでしょう。私は、この男が自分の出すゴミの中に住んで いて、周りを見ることができず、ゴミの中にいるから臭いだろう、というアイディアが気に入っています。彼は隣にいる女性を楽しませるためにいるのではなく、唯一の男性として自分の悪い態度に起因した自己汚染を象徴している、といったとこでしょう か。これは私の推測ですが……。
この展示において、あなたが自分のいくつかの作風をミックスした理由について説明してもらえますか?
スタイルをミックスする方法としては、通常ストリートで作るキャラクターをいろいろと使用しています。それは、ストーリーを豊かにするために必要なことなんです。例えばシンプソンのようなアニメションに様々なキャラクターが登場することにより、物語の構想が膨らんでいくのと同じことです。私の多くの作品はどんな場所にあっても、象徴的、かつ、根底に力強い物語が横たわっているのです。
人々にあなたの作品をどう受け取ってもらいたいですか?
街中の場合は、ハイパーリアリステックなアート作品によって人々の現実や常識を覆すことに挑戦するといった感じです。街は人々が作品に対して反応する舞台なんです。
室内の場合でもカモフラージュの作品と似たようなことをやっていますが、人は私の作品を見に来ているので、彼らを欺くことは難しいです。しかし、もっと大きくて複雑なインスタレーションを作ることができるので違う楽しみ方がありますね。例えば、観客を「ピクニック」のような作品に導くことができますし、これらの奇妙な体験によって新しいアイディアを考えられる機会となるかもしれませんしね。
日本に対する印象は?
滞在したのは東京だけですが、本当に良い刺激を受けて、すぐに大好きな都市の一つとなりました。みんなとても親切で、ミニスカートをはいた女の子たちや礼儀正しい工事現場で働く人びとなどがいるストリートの様子全てが大好きです。東京は生命を感じる都市で、ここに住んでもいいと思いましたね。
木之村美穂さんとのコラボレーションはどうでしたか?
美穂と仕事ができたのはとても良い経験でした。彼女のフィルムはこの展示会を構成していく過程をよく捉えていました。さらにこの展示会の作品のうち、2つは東京の女の子をもとに作られた物で、会場にきた人々がこのフィルムを通してモデルに会うというのもとても面白いと思います。私の好きなパートは、美穂の提案で彼女と東京の街に出て、赤ちゃんと一緒に日本の人たちのポートレート写真をとったところですね。これは人と交流する新しい方法だと思いましたし、成功したのではないでしょ うか。美穂はクリエイティブなエネルギーに満ちていて、自由な精神を持った人です。この先も国際舞台で成功することは間違いないですね。近い将来また一緒 に仕事ができるのを楽しみにしています。
今後のプロジェクトについて教えてもらえますか?
7月にスペインのバルセロナで開かれる「インテルフェレンシア」という屋外フェスティバルでインスタレーションを行う予定です。9月には2年に一度行われるDROOGに 参加するためにアムステルダムに行きますし、新年に行われる別のフェスティバルでフランスのボルドーも訪問します。インスタレーションを行うのにあたっ て、屋外という場所はクリエイティブの最先端だと思っているため、今後も屋外でのインスタレーションを続けていきますが、今回の室内での展示にも満足して います。次回、日本で展示をする際は、屋外でのインスタレーションをやれたらいいですね。
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